『監督としての言動の大切さ』

20160116 juego

 ドミニカ共和国のウィンターリーグは、ファイナルに進む2チーム目を争って熾烈な戦いが繰り広げられています。
 6チームで行われたレギュラーシーズンを3位で通過し、上位4チームで行われるラウンドロビンで何とか2位に食い込みたいエスコヒード。本日、同率2位のまま最終戦を戦います。

 自身もこの12月、筒香選手がプレーした約3週間は通訳としてベンチに入って共に試合に臨む機会をいただきました。日本のプロ球団のベンチに入ったことはないので、比べることはできないのですが、一番の驚きは監督やコーチたちの試合前・試合中の言動が全くイメージしていたものとは違うことでした。

20160117 luis


 エスコヒードの監督はルイス・ロハスさん(ろの発音は思いっきり舌を巻いて下さい)。夏の間はメッツ傘下の1Aアドバンス、セントルーシー・メッツで指揮をとっておられます。

 まず、試合前のミーティング、どうやって選手を奮いたたせるのか?と日本人の自分は思ってしまいますが、ほとんど何もありません。サインの確認や、次の休日の練習の有無の確認だけで、その日の試合について話すことはほとんどありませんでした。そもそも試合前も試合後もミーティングというものがほぼありません。(試合後は皆無です)

20160117 asobi
 (試合前、恒例の球遊びはコーチと選手が一緒に遊んでいます♪)

 試合が始まっても、選手に対して細かい指示をすることは滅多になく、戦況を見つめ、選手起用をコーチと共に考え、イニングの合間にベンチの中を歩いて「バモス!バモス!」と誰にでもなく声をかけるだけです。

 選手がいい結果を出せなかったりしても、それを顔や雰囲気や言葉で表すこともほとんどありません。野球は失敗の連続のスポーツ、選手たちもいいプレーをしたいと望んでいるけど、そうはいかないことの方が多いということを知って、常に冷静に戦況を見つめています。

 ただ、ミスをした若手の選手には近寄って声をかけています。落ち込みそうな選手に近づき、誰にでもミスはある、大事なことはこの先もミスを恐れずチャレンジし続けることだと、選手の目を正面から見て励ましています。監督として勝利を勝ち取ることを球団から求められていながら、ミスした選手を叱ることなく、次のプレーに向けて前向きな言葉をかけ続ける、頭ではできることですが、決して簡単なことではありません。

 そして、裏方の人にも必ずコミュニケーションを取るということも決して忘れません。トレーナーの人たちにも、ボールボーイの人たちにも、ベンチの水を用意してくれる人たちにも試合前は手と目を合わせてコミュニケーションを取ります。(昨日は負けたら敗退が決まるという試合にもかかわらず、試合前の練習中にいつもと変わらぬ笑顔で、監督自ら話しかけて挨拶に来てくれました。どの役職の人とも対等の立場で接し、彼からの経緯にみなの自尊心と彼に対する敬意も高まるのだと思います。)勝利した試合後も裏方も含めて全員と握手。通訳をしている僕のところにも自ら近づいてきて「トモ、グラシアス!」と感謝の気持ちを表してくれます。そのたった一言で、また頑張ろう!とみんなが思えるのではないかと感じます。信頼というスローガンを掲げなくても、信頼関係はこうやって構築されていくのだなと感じている自分がいました。

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 もちろんお互い不満がないわけではないと思います。指導者としてミスをした選手を攻めたい気持ちもあるだろうし、なかなか試合に使ってもらえないことを不満に思っている選手もいるかもしれません。でも、ベンチでもクラブハウスでも、一切指導者の愚痴を言う選手はいませんでしたし、指導者が選手を信頼していないような発言をすることもありませんでした。

 わざわざ勝利を目指すことを確認しなくても、選手たちはみな勝ちたいと思ってプレーしている。うまくいかないこともあるけど、みんなチームに貢献したいと思ってプレーしている。わざわざミーティングをしなくても、その信頼があればこそチームは勝利に向かって一つにまとまるのだと改めて思いました。

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 プレーオフ出場のパーティーには、オーナー・指導者・選手たちだけでなく、ボールボーイ、クラブハウスの掃除の叔父さん、警備員、マスコットキャラクターの中に入っている人まで、実に様々な人々が招待されていて、みな対等の立場で過ごしていました。これも日本ではあり得ないことかなと、隣ではしゃぐメジャーリーガーを見ながら思っていました。

20160117 Ciriaco

 日本の野球も社会も、このような信頼関係を作り上げることができれば、みなもっと能力を発揮できるのかもしれませんね。

 野球だけでなく、ラテンアメリカの社会から学ぶべきことは非常に多いなと率直に思います。
 

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