『身体能力の違いって本当にあるの?』

herrera 201501

 このテーマは今回の渡航でぜひ調べたかったテーマです。
 ラテンアメリカ選手の活躍について、日本では報道でも「彼らは身体能力が違う」とよく表現されます。
 報道だけではなく、国内で講演させてもらっても、「だって彼らは身体能力が違うでしょ。」とよく言われます。特に子供よりも大人の方がそう表現される傾向にあると思います。
 そして、たった2ヶ月間ですが毎日ドミニカ共和国の野球を見てきた感想としては、個人個人の身体能力の違いは「Sí!」あります。同じ取り組みをしていてもメジャーまで到達できる選手とできない選手がいるのは事実だと思います。日本でも一緒ですよね。ただ、日本人とドミニカ共和国人の全体的な身体能力の違いは「No!」ほとんど見当たりません。
  もちろん、体のつくりの違いはあります。ただ、どちらが野球に向いているかという優劣はないと思います。

MLBアカデミー指導歴26年、台湾のプロ球団も2年間指導したこともあるバウティスタ氏をはじめ、多くのMLBアカデミー指導者はハッキリと断言します。ドミニカの人にできて日本人にはできないということなどありえない。全てはアプローチ(練習方法や取り組み方、野球選手を育成する全体のシステム)次第だと。

 ドミニカ共和国では、小学生の間はとにかく野球を楽しむことに重きをおいています。練習なんてほとんど存在せず野球をして遊んでいるだけ。もちろん逆シングルもジャンピングスローも大きなスイングもメジャーリーガーのように。勝っても負けてもワイワイガヤガヤ。エラーも三振もいっぱいするけど、大人も子供もお構い無し。大人の指示を待っている子供は一人もいないですね。ここで、子供たちは将来活躍する上で、最も大切な野球を愛する心を育んでいるのだと思います。

juan varon ninos201501

 中学生になれば、先日のブログのように、個人の能力をどんどん伸ばす練習。ピッチャーは力強いストレートをストライクゾーンへ、打者は力強く速いスイングを、守備では素早い持ち替えを、日々黙々と練習しています。

 メジャーのアカデミーに入れば、上記をさらにさらに向上させることに加えて、投手は変化球の制度や守備の連携の上達、打者は変化球へのアジャストも、守備ではフォーメーションや連携も、そしてアメリカで活躍するために必要なコミュニケーションツールである英語の勉強も開始します。

 13歳くらいから一貫してやっていることは、野手も投手もプレーの中の無駄な動きを極力減らし、自分の持っている力を最大限ボールに伝えるということ。練習は量より質、練習時間は日本より短いけど、練習中の集中力は他の人を寄せ付けないオーラがあります。そして、指導者は長い目で彼らの成長を見守るということを徹底してやっています。今すぐできなくても10年後・20年後にできれば良いと考え、とにかく「君はできる!」と前向きな言葉をかけ続けます。もちろんどの年代もトーナメント制の大会など存在せず、投手が投球過多で潰れること、12歳から木製バットを使用して金属バットの弊害を抑えていることは言うまでもありません。

 指導者も選手もこれをくる日もくる日も繰り返し行い、まさに「塵も積もれば山となる」、この日々の積み重ねがやがて大きな力となり、その過程を見ていなかった人からすれば元々身体能力が違うのだと錯覚してしまうのだと思います。

nunez 201412

 「昔は大きな選手を探していたのも事実だ。ただ、今のベースボールはもうそのような時代ではない。体の大きさではなく、自分の持っている力をいかにボールに伝えられるか、そしていかに速いプレーができるかだ。よくよく考えて欲しい。ドミニカ出身で活躍している選手には決して大きくない選手もいっぱいいるじゃないか。エリック・アイバー、ボニファシオ、ロビンソン・カノーも決して大きくない。2014年のアメリカンリーグ首位打者はMLB全体で最も小さい選手だったことは知っているだろう?今のベースボールは昔のベースボールとは違うんだよ。」と先のバウティスタ氏。

 誤解を恐れずに書くと、どのような練習をしているのか、どうやって指導者は指導しているのか、見たこともないのに彼らは身体能力が違うんだということは彼らに対して非常に失礼で、指導者や報道関係者としても恥ずべき発言じゃないのかなと思います。ドミニカの育成システム、指導者の指導のあり方、選手たちの練習に取り組む姿勢を見た上で、「君たちは練習の過程ではなく、日本人より身体能力が優れているからメジャーまで到達できるんだ。」とは決して言えないと思います。

 一番変えなければならないのは、指導者の指導のあり方であり、大会などを運営する側のあり方、つまり自分自身も含めて大人の側だと思います。子供たちはみんなうまくなりたいと思っています。そう思っていない子なんていません。ならば、将来に渡って子供達が持っている力を存分に発揮できる環境整備と指導方法(試合に勝つためじゃないですよ!)を学び実践し続けることが我々の任務かなと思います。

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 これまた親しくなったトロント・ブルージェイズのアカデミーのコーチであるマテオさんから、別れ際に励ましの言葉をいただきました。
 「時間はかかると思う。でも、君がここんで学んだことは必ず日本の野球を改善することに役立つんだ。仲間をたくさん増やして、その仲間と行動し続けるんだ。そうすればそう遠くない未来、5年後か10年後に僕が君に言った言葉を君は思い出すよ。『必ず良い結果が待っているよ!』とマテオが君に言ったことをね。君の活動は日本の大きな財産になるよ。」

 日本に一度も行ったことのないドミニカ共和国のコーチが日本の子供達のためにとまるで自分の子供のことを思うように何でも親切に教えてくれます。我々日本人自身が変化を恐れず行動する時が今やと思います。日本人もやればできる!
 

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