『プログラムの存在』

Juan Varon coach 20150116

 ドミニカ共和国へ来て早くも1か月半が過ぎ、帰国の途に就く日が近づいてきています。
 何日いても、毎日同じところに練習見学に行っても、新たな気づき・発見がたくさんあり、まだまだ勉強したいというのが本音です。でも、日本の子どもたちに還元するために一度帰国します。
 
 ドミニカ共和国の野球は年代ごとに主に下記のようなカテゴリーに分かれています。
 ①12歳くらいまでの子どもたちが所属するリーガ(リーグ)
 ②13歳以上から17歳前後まで(メジャー球団と契約するまで)練習を行うプログラム
 ③16歳と半年を過ぎた選手がプロ(マイナー)契約してメジャーリーグの各球団で練習を行うアカデミー
 ④既にマイナーやメジャーでプレーしている選手が出場するウィンターリーグ(ドミニカのプロ野球)

Juan Varon doble 2014

 その中で今回の滞在で最も時間をかけて見学させてもらったのは②のプログラムでした。
 ドミニカ共和国内には各市に無数のプログラムが存在します。
 日本で言うと、中学生から高校生前半にあたる子どもたちを指導するクラブチームといった存在でしょうか。
 ただ、日本と決定的に違うところは、このクラブチームが試合に勝つために存在しているのではなく、個々の選手がメジャー球団とプロ契約するために存在しているということです。

 プログラムに入る際に(12-13歳の段階で)、まずはそのプログラムの指導者(オーナー)と契約を行います。指導料は無料、そのかわり、プロ契約した際には契約金の30%をチーム又は指導者に支払うといった内容が多いようです。選手が貧しい家庭の出身であれば住まいや食事もチームが提供し、そのかわり契約金の40%を支払うといったケースもあるようです。指導者はこれを本業として、自身の家族も養っています。

 練習の中で指導者は細かいことをほとんど指導しません。
 打者であれば、近めからの投球を木製バットで力強く速いスイングで、インサイドアウトを意識して振りぬくこと。飛距離よりも打球の質を重視。
 守備はゆるいゴロのみで練習、正面の打球は体の正面で、自分の右方向の打球は逆シングルで、左の打球は左手を伸ばして捕球し、前方のボテボテの打球はダッシュして、一発で素早く持ち替えて強く投げる練習のみ。内野手のボールの持ち替えの速さは日本人に比べてすさまじく速いのですが、それはこのような練習を毎日淡々と行っているたまものだと思います。
 投手もこの時点ではストレートのみで構わないので、速くて強い球をストライクゾーン(ど真ん中でもOK)に投げられるかどうかがポイントのようです。カーブとチェンジアップを覚え始めている投手も見かけますが80%以上はストレートです。

 逆にほとんど見かけない練習は、金属バットを使った練習、変化球打ちの練習、バント、ヒットエンドラン、シートノック、ケースノック、投内連携、投手がスライダーを投げる練習などです。

 なぜ、このように日本と全く違った練習方法なのか?それは、ぜひみなさんにも実際に来てみて、感じていただきたいところなのですが、前者の能力こそが将来メジャーで活躍するために必要な能力で、この年代までにまず伸ばしておくべきことだからなのかなと思います。メジャーのスカウトも前者の能力で契約するかどうかを判断しているようです。

Juan Varon Micol 20150116
(メジャー球団のトライアウト中)

 逆に、変化球を打つこと、バントやヒットエンドラン、守備のフォーメーション、投手の変化球などは、メジャーのアカデミーに入ってから練習を始めて、25歳前後でメジャーに昇格するまでに徐々に身につければ良い技術なのだと思います。それよりも大事なのは前者の個々の能力を若いうち(12歳くらい)からどんどんと伸ばし続けること、それはメジャーに昇格したとしても引退するまで20年-30年かけて伸ばし続けるものなのでしょう。

 プログラム同士の試合や、同じ地域内での大会も6-8月を中心に行われるようです(ぜひ今度はそれも見たいなと)。ただ、どの指導者も口をそろえて言うことは同じです。
 『もちろん、試合だから勝つためにやる。ベストも尽くす。ただし、選手の育成こそがその日の勝敗よりも大切なのは当然のことだ。リーグ戦なので、投手はもちろんローテーションを組むし、チームによって差はあるものの75球を超えて投げさせるチームはほとんど存在しない。先発投手が連投するなんてもってのほかだ。そんなことをして選手たちの未来をつぶしてしまったら、試合に勝ったとしても何の意味もない。打たれても良いからどんどんストレートをストライクゾーンに投げるんだ。バッターはとにかくストライクゾーンにきたストレートを力強く振る。この時期に変化球が打てなくたってなんてことはない。とにかく、どんどんチャレンジして失敗すれば良い。そのために試合があるんだ。』

 その言葉を証明するように、何試合か練習試合や紅白戦を見せてもらいましたが、投手がストレートを投げて打たれても指導者は何も言わないし、打者が変化球に対してとんでもない空振りをしても誰も何も言いません。守備でエラーしても監督自身が笑っているくらい、特にこの時期のミスはなんてことはないということです。

 勝つことはうれしい、もちろんやるからには優勝したい、でも試合や大会に勝つ指導者が評価されるのではなく、優秀な選手をたくさん輩出している指導者やチームが評価されていることがここにいると非常に理解できます。(優勝してもお金は入ってきませんしね。)その価値観というのは日本と大きく違うところですが、子どもたちの能力を最大限に伸ばすという観点から見ると、こちらの指導方法・評価方法が理にかなっているのは明白だと思います。現にメジャーリーガーの数は日本に比べてとてつもなく多いですからね。

 こっちで常に感じていること、それは『日本人にもできる!』ということです。
 今日・明日、1年後・2年後の勝利ではなく、子どもたちが10年後・20年後に能力をいかんなく発揮して活躍できるような環境づくりにこだわって、練習指導・試合運営方法をドミニカ共和国の選手育成を題材に一緒に学んで徹底的にこだわってやっていきませんか?
 きっと、もっともっと優秀な選手を数多く輩出できますし、ドミニカ共和国の選手たちもたくさんの素晴らしい日本人選手との対戦を心待ちにしていると思いますよ!
 

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