『表面的ではなく、根本的な取り組みの違いです。』

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 ドミニカ共和国では5月末から8月末まで3か月にわたって、ドミニカン・サマー・リーグが開催されています。
 これはメジャー全30球団がドミニカ国内に開設しているアカデミー同士のリーグ戦で、30球団中12球団は2チーム編成(例、Mets1、Mets2)で参加しているため、42チームが参加しています。
 各チーム3か月で72試合(日曜以外の月~土の毎日×12週間)の公式戦が組まれており、選手たちの年齢は主に17~18歳、16歳と半年を超えると各球団と選手は契約を行うことができるため、ドミニカ国内のみならず、ベネズエラ・コロンビア・ニカラグア・キュラソーなどなどラテンアメリカ各国の優秀な選手がいわゆる各球団とマイナー契約をして所属します。全試合ドミニカで行われていますが、メジャー球団の傘下にあたるマイナーリーグの公式試合です。

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 昨日まで、3名の方がドミニカを訪問されましたが、みなさん日本の高校で指導に当たられているので、今回は同じ年代がプレーするこのドミニカン・サマー・リーグを中心に視察していただきました。
 見学した全ての試合でアグレッシブにプレーを続ける日本の高校生と同年代の選手たち、投手はどんどんストライクゾーンにストレートを投げ込み、打者は初球から追い込まれても常にフルスイング。もちろん、アグレッシブが故の、若くて経験が少ないが故のミスもたくさん出ます。でも、それ以上に高校生とは思えない力強いプレーやスーパープレーもたくさん飛び出し(数々の豪快な空振りもたくさんするけど、日本のプロ顔負けの特大ホームランも)、そのたびに3名の方々は何度も口をあんぐり・・・。

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 日に日に皆さんの発言も変わってきます。
 『最初はどんな練習をしているのか?日本でも活用できる技術はあるのかと思ってここに来ました。確かに日本でもやった方が良い練習、むしろ今やっているけどやらない方が良い練習もたくさんあると思いました。ただ、その技術的なことは表面的なことで、それ以前にドミニカ共和国の方々がやっていることと日本でやっていることに、もっと重大な根本的な違いがあることに気づかされました。』

 『日本では高校生に対し、高校の間に結果を出させるための指導が主流です。甲子園に出場したい、出場させる、大会で1つでも多く勝つ。それが大きな比重となっています。しかし、ドミニカ共和国では17-18歳の選手たちが25歳-30歳になった時に活躍できるように、今この年代に何をすべきで何をすべきではないかを追求して練習・試合が行われています。同じ野球、同じ年代でも、目指していることが全然違う。だから、日本に帰国して、どういう練習をしていた?どういう技術を身に付けさせていた?という風に質問されても、それ以前の目的・取り組みがあまりにも違うので、その技術的な答えを言っても、根本が短期的な高校の間の結果を求めている限りその答えにはならないと思います・・・』と。

 私自身も日本から訪問して下さる方々がいることによって新たなことに気づくチャンスをいただいています。今回もLAドジャース・アカデミーで27年間コーチを務められているアントニオ・バウティスタさんと色々と意見交換をする場も設定することができました。27年間にわたり、17-18歳の年代の選手指導に携わり、数々のメジャーリーグにおけるスーパースターも輩出して来られました。

 そのアントニオが日本から来られた方々に話していた言葉が忘れられません。
 『どんな木にもいつか必ず実はなるから。絶対に焦ってはいけないよ。』
 27年間、彼はずっと17-18歳の選手たちの指導をしてこられました。でも、彼らがアントニオの目の前で花を咲かせることも、大きな実をつけることもありません。彼らが活躍すべき場所はそれから数年後、ドミニカにいるアントニオの目の前ではなくアメリカのメジャーリーグという舞台であり、むしろ自分の目の前で花を咲かせてしまっては困るのです。

 最後に来られた2名は20代前半の若手の先生方。僭越ながら、厳しい(?)アドバイスをしてしまいました。
 『甲子園に行きたい、勝ちたい、という想いがあるのであれば、教師という職業はやめておいた方がいいかもしれない。なぜなら、教育も同じで、教師自身の目の前で花を咲かせたいと思うのであれば教育の本質と矛盾するから。ただ、ひたすらに、目の前で咲かせる花を見ることなく、どの水が将来に役立つか、どの肥料が彼らの将来に役立つかを考え(勝たなくていいんだよ~と、指導力アップの努力をしないのもまた全然違います。最適な水、肥料の研究、それを与えるタイミングと量はとても大切です!)、何十年も地道にそれをやり続ける覚悟があることがスタートラインだと思うから。』

 『いや、でも正直勝ちたいです・・・。』と。
 そりゃそうよね。人間やし、これまでと現実の環境もあるし。
 でも、その気持ちとどう戦っていくかかなと。
 その結果は10年後、20年後に見えてくるのではないかなと思います。
 目の前の勝った負けたではなくて、常に別の世界で。
 

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