
前々回のブログでもご紹介した通り、この1月には日本の医療関係者もドミニカ共和国へお越しくださいました。ドミニカ共和国でも肘の検診を何日もかけて炎天下の中で行い、中には牛と共に崖を下って、川を渡って、現場まで向かったケースもありました。そんな方々に現地の方々も最大限の敬意を示してくださります。

どこへ行っても、『ドミニカ共和国まで来てくださって、我々のところを選んで下さってありがとう!我々は家族として皆さんを迎えたいと思います。』と言葉をかけられ、ドミニカ共和国のプロリーグ(ウィンターリーグ)で連敗中であったエスコヒード球団(筒香選手が2年前にプレーした球団です)では、チーム状況が悪いにもかかわらず、試合前に監督自ら挨拶に来てくれて、『ようこそお越しくださいました。ここを皆さんの家だと思って過ごしてほしい。』と最大限の敬意を示してくださりました。

特に、最終日に面会していただいたLAドジャース・アカデミーで25年以上コーチを務めるアントニオ・バウティスタ氏からの先生方に対する言葉が印象に残りました。今回の視察の目的、日本での活動を伝えると、アントニオが話し始めます。
「まず、日本という国からドミニカ共和国という遠いところまでわざわざお越しいただいたことに何より感謝します。私は指導者という立場では25年以上も務めているため(ご自身では話されませんが、これまでに数え切れないほどのメジャーリーガーを輩出されています)何かお伝えできることは少しあるかもしれません。でも、皆さんはすでに『人としての素晴らしい心』をお持ちですので、皆さんから私が学ぶべきなのだと思います。なぜ、そのような心をお持ちだと思うか、それは皆さんが自身の仕事と真逆のことをされているからです。皆さんは医師ですので、いくら子供たちが投げすぎて肘を痛めて診てほしい、手術をしてほしいと言われても、何の問題もないばかりではなく、医師としてはそちらの方がお金儲けにもなるわけです。たくさん投げさせる指導者、そのようになってしまう大会システムで開催する主催者にどんどんやらせておけばいいのです。でも、皆さんはそうではない、肘を痛めて辛い思いをする子供たちを診て、やむなく手術をしなくてはならない選手たちを診て、自身のお金儲けや名誉のためではなく、子供たちや選手たちのことを思って、自身の仕事が減る方向に向かって活動されている。そしてさらにはこのような遠いドミニカ共和国まで来て、さらに学ぼうとされている。そのような方々はみなさん素晴らしい心を持っておられる、それは私のこれまでの経験からもわかります。今回のみなさんの滞在が、日本の野球発展に寄与することを私も願っています。」と。

その時、いつもお世話になっている先生(視覚情報センターの田村先生です!)から、ある言葉を聞いたことを思い出しました。自身の行っている仕事がなくなる方向に向かって仕事をする時、それは『真実』に近づくのだと。
医師であるにも関わらず、患者が減り、医師が必要ではなくなる方向に活動する、一瞬矛盾しているようで、これが真実に近づくのだと思います。では、指導者は?指導しなくても子供たちが自身で考える能力を身につけ、いずれ指導者が必要でなくなる方向に指導する。教師は?親は?先輩は?マスコミ関係者は?旅行会社は?公務員は?総理大臣は?道理は全て一緒なのかもしれません。ああしろ、こうしろ、と指示している間はいつまでたっても、自身で考えて自立していく力は身につかず、いつまでもその職業は存在し続けるのかもしれません。そしてそれは真実には近づかないのかも。

自身の立場、名誉と真逆に向かって活動される医師の方々、その方々に最大限の敬意を示すドミニカ共和国の方々から、自分自身もまた新たな学びを得ることができたような気がします。日本に戻ってもこのような想いを持ち続けて活動です。
【ドミニカ共和国での学び2018、最終編に続きます】

皆さま、こんにちは。
1月11日に日本へ戻り、日本での活動を再開しています。
早速、1月14日(日)は、堺ビッグボーイズOBであり、堺ビッグボーイズ小学部《チーム・アグレシーボ》のスーパーバイザーも務める横浜DeNAベイスターズの筒香嘉智選手による『アグレシーボ体験会』を大阪府堺市で開催しました。
多数の応募の中から選ばれた4~6歳の幼児38名と小学校低学年35名(野球未経験・チームに所属していない子供たちのみ対象)の合計73名が参加してくれましたが、中にはご父兄から離れるだけで泣き出してしまう幼児たちもいて、涙あり、笑いありの体験会になりました。

各メディアでも取り上げられていますが、体験会終了後の取材で、これからの日本野球のあるべき姿についてマスコミの方々に話し始めた筒香選手。現役選手でありながら、日本の野球の未来、日本の子供たちの未来に強い危機感を感じているからに他ならないと思います。
常々、彼も話していますが、野球人口が減っているから単に野球をやる子供たちを増やす活動をすれば良いというものではありません。なぜ、減っているのかをもっと掘り下げて考え、行動に移していかなければならないと思います。

今の指導、もしくは、日本の野球のシステム自体が本当に、子供たちのためになっているのか?なっていない部分があるのであれば、勇気を出して変化を起こさなければならないのではないか?
本来、子供たちが大きく成長していくため、失敗を恐れずチャレンジしていくための野球、つまり子供たちの未来が主体の野球であるにも関わらず、小さいころから勝つための『勝利至上主義(目の前の結果主義)』が蔓延し、いつの間にか子供たちは大人の顔色を伺って思い切ったプレーができていないように感じます。そして、それが高校まで(大学まで?)続きます。なぜ、そのような指導になってしまうのか、それは日本の野球特有のトーナメント方式による大会が大いに影響しているように感じます。プロでも優勝チームが143試合中、50試合も60試合も負けることができるにも関わらず、小学生から高校生までは常に負けられないトーナメントで大会に参加しなければならない、勝たなければ次がないため、指導者も力むし、エース投手は酷使されるし、1つのミスが命取りになるからと細かい練習もたくさんしなくてはならなくなるし・・・。その一方で、大きな選手を育てる、失敗してもまたチャレンジを繰り返すといった、将来子供たちが選手としても、社会人としても必要なスキルが育ちにくい環境になってしまっているのではないかと感じています。

このような話をすると必ず、「でも日本にはこれまでの歴史もあるし、それが文化になっているから・・・」、と話される方も多くいらっしゃいます。でも、それが本当に子供たちのためになっていないんなら、変えるしかないんです。もちろん、何事もすぐには変わりません。でも、変えるための努力を続け、変われるところから変わっていくしかないんだと思います。そして、その中で一番簡単なことは自分自身がまず変わること、変えられないと思っている自分を変える、そして変わった自分が変えられると信じて行動を続ける。一人一人がそうやって変わっていくのが一番の近道のように感じます。

自身への批判を顧みず、子供たちの未来のために想いを語ってくれた筒香選手。我々の使命もまたより大きなものになっているようにも感じます。
今日も明日もより良い野球界、そして日本の未来のために、改めて変化を起こしていきたいと自身も感じた体験会になりました。
Siempre Agresivo!! 常に積極的に!!今日も行動・発信あるのみ!!

2018年1月2日、高校野球指導者と奥様(普段はプロ野球の場内アナウンスもされているとのこと!)、そして普段日本の野球少年からプロ選手までの治療にあたられている整形外科の先生方ら4名(合計7名)がドミニカ共和国に到着されました。
日本の野球に関連する医療関係者のドミニカ共和国初上陸(?私が知っている範囲内です)とあって、普段の視察とはまた違った視点での滞在となり、コーディネートした私にとっても大きな学びとなりました。

いつもお世話になっている現地のチームへお伺いし、小学生からメジャーを目指しているマイナーリーグの選手まで150名以上の肘の検診も行いました。ドミニカ共和国出身選手もトミージョン手術を必要とするケースも増えており、どのような結果が出るかと思っていましたが、これだけ調べても今すぐ処置が必要な選手は一人も出てきませんでした(痛みのある選手もいましたが数週間休めば治る程度とのこと)。
日本で野球少年の肘を調べた際に数パーセントは出てくるという骨の異常が1人も出てこなかったとのこと。これは主に、投球数の過多、登板間隔の短さ、(加えて投球強度や投球フォーム)そしてタバコの副流煙が原因と言われているようですが、この症状が出なかったとのこと。これはある意味、ドミニカ共和国の野球指導の考え方が日本よりも理にかなっていることの証明にもなるのではないかなと思いました。

どの年代のどのような指導者に聞いても、投手の投球数の管理は必要とこの国では答えます。小学生であれば40~60球まで、それだけ投げたら中4日は空ける、高校生でも75~80球くらいまで、こちらももちろん中4日か5日は空けます。当然のごとく、試合は何週間か何か月もかけてリーグ戦で行われ、トーナメントで行われることはありません。このような指導者の意識、大会開催者の意識、システムの違いによって、選手たちの肘の障害に日本と大きな差が出ているのであれば、思慮深き我々日本人は必ずここから学ばなくてはいけないと思います。
そして、もう一つの大きな要因と言われるタバコの副流煙。これも日本ではまだまだ野球指導現場、保護者も含めて子供たちの周りには副流煙が蔓延していますが、ドミニカ共和国でタバコを吸っている人は意外と少なく全人口の2~3%ほどと言われています。街中でタバコを吸っている人はほぼ見かけることはありませんし、未来ある選手の前に立つ指導者がタバコを吸うということは社会から相当厳しい目で見られるため、国中探してもほとんどいないのではないかということでした。そういった意味では日本の喫煙に関する環境も子供たちの未来を思えばもっともっと良くなっていかなければならないのだと思います。
私自身が興味を持っていたのはドミニカ共和国の指導者や選手がこのような医師の検診を受けてどのような態度を見せるかということでした。日本では、指導者が怖くて痛い、投げられないと言えない、指導者が医師の検査を受けることを勧めないという声もあるときいていましたが、こちらは良い意味で選手も指導者も真剣でした。
検査を拒否する指導者・選手はもちろんいませんし、中には私も見てほしいとプレーとは関係ないお母さんまで登場。痛みがある場合に、数週間休んだ方が良いと告げると、指導者は選手に対して痛みがなくなるまでしっかり休むように!と念を押し、医師たちに『それでも子供たちがバッティングをしたいと言ったらさせてあげてあげても大丈夫か?』と、野球をしたい選手たちへの配慮も忘れず、メジャーを目指す契約金(なんと)1億6000万円で契約している選手は真剣なまなざしで自身の体のケアとプレー向上に対するアドバイスを聞いていました。
集約されるのは、育成という考え方の違いだと思います。
ドミニカ共和国では、25歳からメジャーリーガーになることを選手は考え、指導者も彼らがそうなれるように考えます。若い選手であれば全く無理することなく、(まずは無理させる必要もなく)、もし痛めても早く復帰するより、しっかり治すことに専念すればいいのです。
訪問中、偶然に話すことができたフェルナンド・ロッドニー投手(メジャー通算300セーブ!)とも色々と意見交換をすることができました!彼も一度、怪我をして、復帰後40歳を超えてもメジャーで活躍しています。

一方で、日本は常にその年代での勝利が優先されます。小学生は小学生の間の勝利、高校生も高校での結果が重視され、それよりも未来の活躍というものにあまりフォーカスはされていません。それは指導者だけでなく、トーナメントを中心にする大会運営方式にも大きな問題があると思います。
医療の側面からみて、改めて日本の野球の課題、これからのあるべき姿を確かめることができ、私自身にとっても収穫多き日々となりました。もちろん指導者の方含め、こういった形でドミニカ共和国を訪問して下さる方に改めて感謝の気持ちでいっぱいです。
この学びを、日本でまた多くの方に伝えることができればと思っています!
【ドミニカ共和国での学び続編に続きます!】

あけましておめでとうございます!
ドミニカ共和国も日本より13時間遅れで、新年を迎えようとしています。
2017年を振り返って、正直、日々満足していない自分の連続でした。
内心、なんでもっとここまでできないんだ、もっとこう変化させなければいけないのに、もっとこう伝えたいのに・・・、そして自分の無力さと・・・。1回もこれで良かった!と思えたことはなかったように思えます。
しかし、今振り返ってみると、確かにこの1年で前進しているような気もします。
大小合わせて、1年間で81回もセミナー開催や講師としてお招きいただき、たくさんの方に接することもできました。間違いなく、引き合わせていただいた、足を運んでお越しいただいた皆様のお陰です。
セミナー開催するだけでなく、まだまだ小さな変化ですが、これまでとは違うものが生まれ始めている予兆も感じます。

もしかしたら、日々満足をしない、だから行動を続ける、そして気づいたら進んでいる、それでも良いのかなと振り返って思います。

2018年のテーマは『剛』、何とか頭におりてきました。
力強く、活動を継続できればと思っています。
2018年もよろしくお願いします!!
ドミニカ共和国 サントドミンゴにて
(写真はサンティアゴのシバオ球場と、北部の街プエルトプラータです)