
ドミニカ共和国のウィンターリーグは、12月27日から上位4チームでの準決勝ラウンド(各チーム総当たりで18試合、上位2チームが決勝シリーズへ)が始まっています。
今年はWBC開催年ということもあって、続々とスーパースターも出場、ハンリー・ラミレス(レッドソックス、2016年は30本塁打111打点)、ロビンソン・カノー(マリナーズ、同39本塁打103打点)、フェルナンド・ロッドニー(Dバックス、メジャー通算261セーブ)らはレギュラーシーズンから出場し、この後、ネルソン・クルース(マリナーズ、同43本塁打・105打点)、エリック・アイバー(タイガース)、グレゴル・ポランコ(パイレーツ)なども出場予定で、ウィンターリーグもさらに盛り上がりそうです。
日本も壮行試合などを行いますが、ウィンターリーグと呼ばれる各国の公式戦で何試合も実践を行えるラテンアメリカ諸国は観客もリーグ関係者も喜ぶし一石三鳥くらいでしょうか。


2013年の決勝はドミニカ共和国対プエルトリコ、カリブに浮かぶ両チームが対戦し、3対0でドミニカ共和国が勝利しましたが、試合終了後に敗戦チームのプエルトリコの主力、ジャディエル・モリーナ(カージナルス)やアンヘル・パガン(ジャイアンツ)らが、自チームの選手全員を呼び出して、ドミニカ共和国の指導者・選手たちを祝福し、ハグを交わしていたことがとても印象的でした。ドミニカ共和国の選手たちもプエルトリコの選手たちが出てきてくれたことにすぐ気づいて、自分たちから彼らのところに近づいていきました。果たして、例えば、日本が韓国に決勝で負けたとして同じことができるだろうか・・・と、正直思ってしまったことをついこの前のように思い出します。勝利に向かって全力を出し切る、結果は結果として受け止めて、敗者は勝者を称える。勝者も全力を出し切った相手チームを称える。それこそがスポーツの良いところであるにも関わらず、自分たちのことだけを考えて、勝とうが負けようがその結果に一喜一憂しすぎるのはやはり考えないといけないなとその時の彼らの姿勢を見て思いました。
https://www.youtube.com/watch?v=tcD1n4R30Hg よろしければ、上記のビデオ2時間52分(172分)あたりをご参照下さい。
WBC出場予定のプエルトリコ出身のカルロス・ベルトラン(アストロズ・通算本塁打421本のベテランです)が先日ドミニカ共和国のラジオに応えていて、彼のコメントを聞いていても何か我々の感覚と違う印象を受けました。
まず、アナウンサーも結果に関する質問(勝ちたいか、優勝できるのかなど)は一切しません。もちろん、勝たなければならないという意味のコメントもしません。ベルトランは、自分が自身の島を代表して大会に出られることを誇りに思っていること、たくさんの仲間と一緒に野球ができることを楽しみにしていることを話していました。そして、最後に彼は、『ドミニカ共和国とプエルトリコはライバルではあるけれども、同時にカリブを代表する仲間だと思っている。前回のようにカリブの野球というものを世界に伝えることができれば、これほどうれしいことはないよ。』と話していました。
WBCに向けて、日本の報道もこれから徐々に騒がしくなってくるでしょうか?
世界一になるために~!勝たなければならない~!というコメントも多く聞くことになるでしょうか?
試合はもちろん勝つためにやるし、全力を尽くすものであることは当然です。
ただ、選手たちが最大限の力を発揮できるように、そのためには彼らが仲間と共に試合ができること自体を楽しんで、最大限アグレッシブにプレーできるように、マスコミも国民も彼らを暖かく見守る必要があるのかもしれません。
ベルトランのように、自分たちが勝つことだけではなく、アジア全体の野球、世界全体の野球の発展のために、日本の野球界は何ができるのかと考えた時に、日本の最大の力が出せるのかもしれないなと感じています。

今年のドミニカ共和国のウィンターリーグ・レギュラーシーズンは稀に見る大混戦で、最終戦まで全チームに次の準決勝ラウンド(上位4チームのみ)に進める可能性が残る展開になりました。
雨で消化できていない1試合を除いて、
1位(暫定)ヒガンテス 49試合 26勝23敗
2位(暫定)リセイ 50試合 26勝24敗
3位タイ アギラス 50試合 25勝25敗
3位タイ エスコヒード 50試合 25勝25敗
5位(暫定)トロス 50試合 24勝26敗
6位(暫定)エストレージャス 49試合 23勝26敗
最終節開始前に、3位から6位までが1ゲーム差以内にひしめく大混戦になり、3位タイのアギラスとエスコヒードが最終戦で勝利して、準決勝ラウンド進出を決めました。

一昨年からお世話になっている、エスコヒードの方々とコミュニケーションを取らせていただきながら多くの試合を見せてもらいましたが、昨年優勝チームながら、今シーズンは途中大苦戦でレギュラーシーズン終了直前(残り2試合)まで敗退圏内の5位。負けられない戦いを連戦連勝(最後は3連勝)で乗り切り、最後の最後でなんとか勝ち残りました。

昨年もそうだったのですが、負けられない試合直前の指導者・選手たちの出す雰囲気が何とも日本と違うような気がします。
もちろん、遊びでやっているのではなく、何としても勝ちたいのですが、今日は大事な試合前だから、あまり話しかけない方が良いかなと思っていると、向こうから監督やコーチ、選手たちが近づいてきて、『やあ、トモ元気??』と気さくに話しかけてきてくれます。それも、まるでこれから練習を終えてレストランに行くような雰囲気で・・・。
記者にインタビューされたGMは『もう1つも落とせない試合が続くので、残り3試合全て勝つしかないですね!』という質問に、ただただにこやかに笑って『Si Dios quiere…(神が望むならばね)』と。

もちろん、『もう負けられない!』『勝つしかない!』ということは指導者も選手もファンもわかっています。
ただ、彼らの中にまず先にあるのは、結果は神が決めるということ。自分たちは全力を尽くす、ただ相手も全力を尽くして勝ちに来る、だからそこで勝たなければならいと力むことが実は自分たちの力を最大限に出せないということをわかってそのような姿勢・表現になるのではないかなと思います。
残念ながら日本のアマチュア野球は、小さい頃から高校までトーナメント戦で負けられない戦いの連続です。もちろんみんな勝ちたい!さらに、そこで指導者が絶対勝つぞ!勝たなければならない!という気負いを選手にかけてしまいます。それが実は選手たちの力みにつながるとは気づきもせずに。
今回の結果を見ても、50試合戦って、たった1勝多かったか少なかったかで順位が決まるくらい、野球はたった1試合で本当の実力なんて測れないスポーツです。その日によって、どこが勝つかわからない、だから何度も何度も対戦して少しでも多くの勝利を重ねる。このスポーツの面白さは正にそこにあるような気がします。
もちろん遊びでやるわけではない、みんな勝ちたい、その中でお互いが最大限の力を発揮して、より良い試合にするには、結果は神に預けて、我々人間は謙虚に自身の全力を尽くすのみなのかもしれません。
結果は、Si Dios quiere(シー ディオス キエレ)神が望むならば!

2016-2017年のドミニカ共和国ウィンターリーグ、レギュラーシーズンも残り各チーム6試合となりました。レギュラーシーズンから次のラウンドロビン(準決勝ラウンド)に進めるのは6チーム中4チームのみで、今年は例年以上に均衡しており、残り6試合で2位から5位までの4チームが3ゲーム差の中にひしめいています。
昨年の優勝チーム・エスコヒードは現在のところ5位(20勝24敗)で、このままだとファーストラウンド敗退圏内、2位タイのアギラスとリセイ(23勝21敗)は何とか早くファーストラウンド突破を決めたいところです。

ウィンターリーグと言えば、日本では教育リーグ的にみられる傾向にありますが、ドミニカ共和国の場合は全くそんなことはありません。各チーム、興業のかかったれっきとしたプロチームで、特にチーム数が少なくなるラウンドロビン、決勝シリーズは集客が多くなるため、各チーム勝ち残りを目指して精一杯戦っています。勝てなければ、シーズン途中でもGMや監督の解雇が平気で行われるくらい勝敗に厳しい世界です。

そういう状況でも選手と観客が必ず忘れないこと、それは『野球を楽しむ』ということだと思います。ただし、その楽しむという意味が日本とは少し違っています。
日本で『楽しむ』という言葉を使うと、適当にやる、遊びでやるという意味にとらえられることもあると思います。実際、ドミニカの選手もグラウンドに出てきたときはまずグローブとボールで球遊び、試合直前でもぺちゃくちゃおしゃべり、そしてシートノックもなく突然試合が始まります。日本から来られたほとんどの方は試合開始時間数分前に『本当にもうすぐ試合が始まるんですか??』と聞かれます。でも、きっちり始まるんです。
なんだ、やっぱり遊びで適当に楽しくやるのかと思ったら、大間違いで、実際のプレーは投手と打者の力と力の真っ向勝負、投手はどんどんストライクゾーンで勝負し、打者は初球からフルスイングで立ち向かいます。内野手のプレーは空いた口がふさがらないほど鮮やか。大げさではなく、日本ではアウトにならないものが各試合3~5くらいはアウトになるのではないかと思えるレベルの高さです。

では、なぜこんなプレーができるのか?私なりの見解では、それはやはり『最大限楽しんでいるから』になるのだと思います。もちろん、ここに来るまでには練習も必要です。ただ、その練習は試合で最大限の力を発揮できるものでなくてはなりません。そして、試合になれば、最大限楽しむ。その根底にあるのは、野球が非常にミスの多いスポーツで、メンタル面で左右されやすいスポーツであるからだと思います。
打者として打席に立つとき、その打席で打てるかどうかは誰にも分りません。でも、打てる可能性を少しでも高くするには、『自分は打てる!』と信じて打席に立つことです。『打てなかったらどうしよう』と思っては打てる確率も下がります。投手も打たれたらどうしようと思うより、打たれるわけがないと思った方が結果は良くなる可能性は上がるし、守備も同じく『エラーしたらどうしよう』ではなく、『全部自分が華麗な守備でさばいてやる』という気持ちで守っていた方が良い結果が出る可能性は高まります。そして、ミスをしたとしても、次はできると信じ続けることが大事になってきます。なぜなら野球はもともとミスがたくさんあるスポーツなので。どんな状況でも、そういった気持ちで選手がポジティブにプレーできるように、監督・コーチのあり方は非常に重要です。ミスを責めることなく、常に選手らに期待する声をかけ続けられるかどうかが重要になってきます。
チームが勝利を収めるためには、言うまでもなく個々の力を最大限発揮することが重要です。そして、その個々の力を最大限に発揮するためには、自分はできると信じ、最大限前向きにポジティブにプレーする。だから、投手はどんどんストライクゾーンに直球を投げ込み、打者も初球からどんどんフルスイングする、野手は飛んできた打球に対して自分のアイデアをフルに活用して華麗にさばく、そんな楽しい野球を見て観客も楽しくないわけがありません。
チームの勝利のために選手も観客も最大限野球を楽しむ。楽しむという本当の意味は何なのか?日本のプロもアマチュアも、野球以外においても、ドミニカ共和国から学ぶことは多いのではないかなとドミニカ共和国のウィンターリーグを見ながら日々感じています。

筒香嘉智選手に会える、アグレシーボ体験会、1月15日に開催決定!
案内はこちらです(2回クリックで拡大します)!

2016年セ・リーグ2冠王(本塁打・打点)となった横浜DeNAベイスターズの筒香嘉智選手。12月5日からすでにトレーニングを開始し、早くも来シーズン以降に向けたさらなる進化を求める日々がスタートしています。今の結果に満足することなく、飽くなき向上心を持ち続ける姿勢には自身より10歳も年下ながら頭が下がりっぱなしです。
そんな筒香選手が現役プロ野球選手でありながら、自身の能力向上だけではなく、少年野球の発展に寄与する活動を開始しようとしています。

筒香選手は昨年・一昨年にドミニカ共和国を訪問し、日本の特に少年野球の置かれている環境(少子化やスポーツの多様化などで野球離れが加速している現状)と、将来のメジャーリーガーを目指し、とにかく明るく楽しく(無理もせず)子供たちが前向きに野球をプレーしている海外の少年野球との違いを目の当たりにして、日本の少年野球に改革が必要と感じるようになりました。

現在、日本では全国各地で子供たちの野球離れが加速し、チーム数も激減しています。これは少子化ということだけでなく、子供や親から野球が敬遠される様々な要因があるからだと思います。指導者が勝つために怒鳴る野球は時代遅れで、様々なスポーツがある中でいかに野球というスポーツが楽しいスポーツであるかを子供たちに伝えていける指導でなくては、今後も野球は衰退の一途をたどることになると思います。

そんな中で現役プロ野球選手でありながら、自身がプレーする野球の楽しさを子供たちに伝えたいという想いから筒香選手自身がこの冬アカデミーを開校する予定です。
世界の子供たちに負けないくらい、日本の子供たちも積極的にプレーしてほしい!その思いから名付けられたチーム・アグレシーボ(スペイン語でアグレッシブを意味します)。
2017年1月15日(日)午後2時からは、河内長野市南花台の堺ビッグボーイズ専用グラウンドで、筒香選手本人も訪れてアグレシーボ体験会を開催予定です。5~10歳の多くの野球少年や野球を始めたいと思っている子供たちがたくさん集まってくれることを楽しみにしています。
詳細案内・申し込み方法は下記のFBの案内の中にあります。
https://www.facebook.com/events/1325350737517563/野球界の発展のために、Siempre Agresivo!! シエンプレ・アグレシーボ!(常にアグレッシブに!)