『意外と?全力疾走する選手たち。』

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 11月末から1月末までの滞在で、今回はドミニカ共和国、ベネズエラ、コロンビアのウィンターリーグに触れることができました。

 日本でウィンターリーグと言えば、若手選手が経験を積む場所、フリーエージェント(日本のようにFA宣言をしたということではなく、来季の契約が決まっていない選手を指します。)となっている選手のアピールの場所という意味で捉えられる印象があります。

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 確かに、アメリカのメジャーリーグ・マイナーリーグのオフに行われるこのウィンターリーグにはそういった要素も含まれます。しかし、それ以前に球団は独立したプロ球団として経営がかかっているということは日本にいるとあまりイメージできないかもしれません。要は良い内容で勝って良い成績を残せなければ、集客やグッズ販売、スポンサー獲得も見込めませんし、より多くのお客さんが観戦に訪れるプレーオフに進出できないとなると経営的には大きな痛手となります。

 私自身も今回様々なリーグの野球に触れて、思っていた以上に勝敗にこだわるという印象を持ちました。

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 そういったリーグの試合で印象的なのは選手たちの全力疾走です。特にレベルの高いドミニカ共和国とベネズエラの選手たちは、それを怠ることはほとんどありません。
 メジャー球団のアカデミーのコーチも口を揃えて言うのが「当たり前のことを当たり前にすることが大切」ということです。
 『君は全ての打席でヒットを打つということは残念ながらできない。でも、全ての打席で全力疾走をするということは君の意思次第でできること。必ずできることは必ずやる。それを示すことは君のプレーを見に来てくれる観客の方々に対する最低限の敬意になるんだよ。』と、意外にも打撃でいい結果を残すことよりも、当たり前のことを当たり前にすることを大切にする指導が行われていることに気づかされます。

 残念ながらコロンビアのウィンターリーグは、ドミニカ共和国やベネズエラよりレベルがだいぶ落ちるのですが、それは打撃・投手・守備のレベルよりも、実はこの全力疾走をしないところに現れているような気がしました。内野ゴロを打っても一塁までジョギング、内野フライなら走らないなど、残念ながら観客に対する敬意が足りない印象でした。それがそのまま選手たちやリーグのレベルになっているような気がします。

 僕も含めて、日本人は外国人が横柄で全力疾走をしないという印象がありますが、実はメジャーリーグの選手も一生懸命走ります。ドミニカ共和国・ベネズエラのウィンターリーグでも一生懸命走ります。そしてそれがそのリーグのレベルの高さにつながっています。

 さて、日本のプロ野球の選手たちはどれだけ全力疾走をしているか、どのレベルの野球をしているか?観客の方々への敬意は足りているか?来シーズンはそんな視点でも、海外のリーグとのレベルの違いを比較してみても良いかなと思います。

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 観戦している方も選手や球団にナメられたらあきませんよ!!
 対等の立場で、時に優しく、時に厳しい視線で!

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『ベネズエラという国、政治が美しい国を潰した・・・。』

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 今回滞在したベネズエラという国では、野球もさることながら、人々の生活から色々と感じることの方が多かったような気がします。

 1970年代の頃のベネズエラは、世界一と言われる原油の埋蔵量によって多いに栄え、首都カラカスの高層ビルに高速道路、山を突き抜ける多数のトンネル(トンネルはラテンアメリカではまずお目にかかれません)、整備された地下鉄網などは目を見張るものがありました。

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 一方で貧富の差はこの頃から拡大を続け、多くの庶民の心をつかんで大統領となったのがウーゴ・チャベス氏でした。キューバにならい、様々な企業を国営化し、石油資源をもとに経済大国・アメリカにも大いに反目し、社会主義を貫いてきました。

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 しかし、そのチャベス氏が大統領任期中に若くして亡くなり、それと同時に世界の原油安がふりかかり、原油に頼り他の産業を放棄してしまっていたがために外貨獲得に苦しみ、さらにはその後の現政権の狂気とも思える政治により、国内は混乱を極めています。

 薬局に行っても石鹸がない、シャンプーがない、髭剃りがない状況で、ついには食料までもが枯渇し始めており、スーパーで卵も手に入らなくなってきていると言われています。

 政府は外貨を1ドル=6.5ボリーバルに固定し、ボリーバルから米ドルへの両替を禁止したため、外貨を求める企業や富裕層との闇両替レートは1ドル=833ボリーバル(2016年1月現在)まで上昇、実際のレートとは100倍以上の差が出ています。

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(500ドル両替してもらったらこの札束。生まれて初めて肩でお金を担ぎました・・・。)

 先の食料問題も広大な土地で作ればいいではないかと思いますが、政府が現実とはかけ離れた固定レートを採用して輸入をしているため、作ったところで飛んでもない赤字になるだけという状況。実質、国内の通貨の価値が下がれば、人件費や国内での物資調達の費用は安くなるため輸出業が盛んになるはずなのに、儲けを外貨に換金できない上に、治安の悪化で駐在員をおくことも危ぶまれ、続々と撤退。

 政府の予算も底をついているため、どんどん紙幣を印刷してインフレがおこり、実際の通過の価値もみるみる下がっていく、物価はどんどん上がるが、お給料はそこまで上がらない、時に払われない状況。貯蓄していたボリーバルは紙くず同然になるという悲惨な状況です。
 挙げ句の果てに、こんな状況で政府の関係者が不正を働いて私財を蓄えているとあってはどうしようもなく、ここ数年のインフレ率はアフリカなどの開発途上国を差し置いて、世界ワースト1位になっています。

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 治安も残念ながら世界一悪いと言われるくらいに悪化しており、昼間の一部地域を除いて徒歩での移動は不可能で、タクシー運転手も強盗に様変わりするため安全な移動手段確保も困難、警察・軍隊も既存の給料では到底生活できないために犯罪に手を染めている人もいるという状況です。(私は何事もなく無事に通過しましたが、一番の難関は入国する際の空港の警察と税関の職員だとか。)

 しかし、教育は他のラテンアメリカの国に比べても非常に高いレベルで、私が接した方々もとても思慮深く親切な方ばかりでした。政治の腐敗による国内の混乱、その中で生まれてしまう一部の犯罪者(彼らも生きるための必死の手段であるとは思いますが)のために、多くの素晴らしい人格の方々をも疑わなければならないこと、本来もっているベネズエラの美しさまでもが消されてしまうことが非常に悲しいことだと思います。

 ただ、たった1週間ですが、現地に滞在してみて、日本も他人事ではいられなくなるのではないか?とずっと頭をよぎっていました。
 形は違えど、日本も多くの問題を先送りにし、いつか我慢できなくなる日が来るのではないか、そしてその有事の時に一番大切な創造力と行動力を生み出す教育をしていないことが、何よりも大きなツケとして現れるのではないかと。

 ベネズエラが正常な状況に戻るためには、今始めたとしても5年から10年はかかるのではないかと言われています。長い年月ですが、今始めなければ、いつまでたってもその5年後・10年後はやってきません。状況は悪化を続け、正常に戻るまでの期間が長引くのみです。そして、これは日本にとっても同じこと、問題を先送りしているだけでは泥沼にハマり抜け出すまでに時間がかかるだけなんです。

 短期の旅行者としては、少々の物不足も我慢すればすみますし、嫌なら出て行けば良いだけです。本当につらいのは現地に暮らす方々だと思います。彼らが少しでも早く平穏な生活を取り戻せるように願いつつも、明日は我が身と考え将来の日本に必要なことを微力ながら実践し続けていこうと想いを新たにした滞在となりました。

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『監督としての言動の大切さ』

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 ドミニカ共和国のウィンターリーグは、ファイナルに進む2チーム目を争って熾烈な戦いが繰り広げられています。
 6チームで行われたレギュラーシーズンを3位で通過し、上位4チームで行われるラウンドロビンで何とか2位に食い込みたいエスコヒード。本日、同率2位のまま最終戦を戦います。

 自身もこの12月、筒香選手がプレーした約3週間は通訳としてベンチに入って共に試合に臨む機会をいただきました。日本のプロ球団のベンチに入ったことはないので、比べることはできないのですが、一番の驚きは監督やコーチたちの試合前・試合中の言動が全くイメージしていたものとは違うことでした。

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 エスコヒードの監督はルイス・ロハスさん(ろの発音は思いっきり舌を巻いて下さい)。夏の間はメッツ傘下の1Aアドバンス、セントルーシー・メッツで指揮をとっておられます。

 まず、試合前のミーティング、どうやって選手を奮いたたせるのか?と日本人の自分は思ってしまいますが、ほとんど何もありません。サインの確認や、次の休日の練習の有無の確認だけで、その日の試合について話すことはほとんどありませんでした。そもそも試合前も試合後もミーティングというものがほぼありません。(試合後は皆無です)

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 (試合前、恒例の球遊びはコーチと選手が一緒に遊んでいます♪)

 試合が始まっても、選手に対して細かい指示をすることは滅多になく、戦況を見つめ、選手起用をコーチと共に考え、イニングの合間にベンチの中を歩いて「バモス!バモス!」と誰にでもなく声をかけるだけです。

 選手がいい結果を出せなかったりしても、それを顔や雰囲気や言葉で表すこともほとんどありません。野球は失敗の連続のスポーツ、選手たちもいいプレーをしたいと望んでいるけど、そうはいかないことの方が多いということを知って、常に冷静に戦況を見つめています。

 ただ、ミスをした若手の選手には近寄って声をかけています。落ち込みそうな選手に近づき、誰にでもミスはある、大事なことはこの先もミスを恐れずチャレンジし続けることだと、選手の目を正面から見て励ましています。監督として勝利を勝ち取ることを球団から求められていながら、ミスした選手を叱ることなく、次のプレーに向けて前向きな言葉をかけ続ける、頭ではできることですが、決して簡単なことではありません。

 そして、裏方の人にも必ずコミュニケーションを取るということも決して忘れません。トレーナーの人たちにも、ボールボーイの人たちにも、ベンチの水を用意してくれる人たちにも試合前は手と目を合わせてコミュニケーションを取ります。(昨日は負けたら敗退が決まるという試合にもかかわらず、試合前の練習中にいつもと変わらぬ笑顔で、監督自ら話しかけて挨拶に来てくれました。どの役職の人とも対等の立場で接し、彼からの経緯にみなの自尊心と彼に対する敬意も高まるのだと思います。)勝利した試合後も裏方も含めて全員と握手。通訳をしている僕のところにも自ら近づいてきて「トモ、グラシアス!」と感謝の気持ちを表してくれます。そのたった一言で、また頑張ろう!とみんなが思えるのではないかと感じます。信頼というスローガンを掲げなくても、信頼関係はこうやって構築されていくのだなと感じている自分がいました。

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 もちろんお互い不満がないわけではないと思います。指導者としてミスをした選手を攻めたい気持ちもあるだろうし、なかなか試合に使ってもらえないことを不満に思っている選手もいるかもしれません。でも、ベンチでもクラブハウスでも、一切指導者の愚痴を言う選手はいませんでしたし、指導者が選手を信頼していないような発言をすることもありませんでした。

 わざわざ勝利を目指すことを確認しなくても、選手たちはみな勝ちたいと思ってプレーしている。うまくいかないこともあるけど、みんなチームに貢献したいと思ってプレーしている。わざわざミーティングをしなくても、その信頼があればこそチームは勝利に向かって一つにまとまるのだと改めて思いました。

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 プレーオフ出場のパーティーには、オーナー・指導者・選手たちだけでなく、ボールボーイ、クラブハウスの掃除の叔父さん、警備員、マスコットキャラクターの中に入っている人まで、実に様々な人々が招待されていて、みな対等の立場で過ごしていました。これも日本ではあり得ないことかなと、隣ではしゃぐメジャーリーガーを見ながら思っていました。

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 日本の野球も社会も、このような信頼関係を作り上げることができれば、みなもっと能力を発揮できるのかもしれませんね。

 野球だけでなく、ラテンアメリカの社会から学ぶべきことは非常に多いなと率直に思います。
 

『ほろ苦い思い出の街』

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 約7年ぶりに訪れたコロンビアのカルタヘナ。2008年から青年海外協力隊の野球隊員として赴任していた街です。
 当初は2年間の派遣予定でしたが、1年3ヶ月で別の街へ移動することになりました。
 要は活動がうまくいかなかったのが要因で、コロンビアで一番野球が盛んで、一番の観光地でもありますが、自身にとってはほろにがい思い出の街でもあります。

 確かに派遣を要請しておきながら、県の野球連盟は非協力的でした。(客観的にみても、笑)
 赴任した初日に『君は誰?』みたいな顔をされて、『僕、歯医者行くから出ていくね。』と言って戻ってこなかった会長には参りました(苦笑)。

 でも、今回改めて訪れてみて感じることは、あの時は気づいていなかったけど、もっと他の角度から様々な取り組みができたのではないか?ということです。
 もちろんスペイン語の語学力も当時はまだまだでしたが、それ以上にラテンアメリカ野球の仕組み、彼らにとって野球とは何なのか、どうやってメジャーリーグを目指すのか、そのためにどのような取り組みをするべきなのか、その頃は全くわからず(わかっていないことすらわからず)突っ走っていたのだと思います。
 そして、自分の無知をいいことに、周りがわかってくれないと愚痴を言っていたことを今となっては大変恥ずかしく思います。

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 いつでも、どこでも、どんな立場でも、解決策や改善策を見出すためには、愚痴を言う前に、まずは自分が学ぶことが大切だと7年前の自分を振り返りながら痛感します。

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 7年ぶりの訪問となったのでチームが変わっていたり、残念ながら亡くなってしまったというコーチもいました。
 それでも、7年間全く連絡もしていなかったにもかかわらず、顔を見るなり思い出してくれて、『もしかしてトモか??』と満面の笑みでコーチや当時の選手たちが迎えてくれました。
 自分が覚えていないことでも、『トモは僕たちにこれも教えてくれた、あれも教えてくれた。』と、たくさんのことを覚えてくています。『ほら、見て!グラウンドをキレイに使っているでしょう!?僕たちはトモから野球以外の大切なこともたくさん学んだんだ。』と嬉しそうに話してくれる彼らを見て、こちらはもっと嬉しくなります。

 やはり指導する側の影響は大きいなと感じます。
 どこの国でも学んだ人はそれをもとに人生を歩んで行くのだと思います。
 だからこそ教える側の人間が常に謙虚に学び、挑戦を続けていかなければならないのでしょうね。

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『ベネズエラの首都カラカス!』

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 ベネズエラ後半は、首都のカラカスに滞在しました。
 高層ビルに高速道路網、経済危機に苦しむ国とは思えないくらいの近代的な街中に球場があります。

 同じ対戦カード(マガジャーネス対レオーネス)の第3~5戦ですが、さすが首都の人気チームだけあって、26,000人収容の球場は3日間満員が続いていました。

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 観客の熱狂は言うまでもなく、毎試合10組くらいの喧嘩が発生し、機動隊に連行されていきます。選手も監督も接戦と球場の雰囲気によってヒートアップし退場者も続出です。

 レベルもそうですが、逃げることなくドンドン投げ込んでいく投手たち、初球からフルスイングの打者たち、これぞ野球という試合の連続です。

 球場が割れんばかりの興奮、失敗を一切恐れない積極的なプレーとプレーのぶつかり合い、できることならぜひ日本の多くの皆さんと共有したいと試合を見ながら思っていました。

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 実際には暗くなってからの治安は最悪な上に(徒歩はアウト)、安全なタクシーを見つけることも困難(タクシードライバーも強盗に様変わりします)、その前にベネズエラ通貨(ボリーバル・フエルテ)への両替も困難、経済危機に陥っているため物資の調達も困難(食堂に行っても飲み物が売っていない、薬局へ行ってもひげ剃りが売っていない、スーパーに行っても卵が売っていない状況)ですので、すぐにできるかどうかはわかりませんが、ドミニカ共和国で実施できたように日本の多くの指導者の方がここに野球を学びに来て、日本の選手がここでプレーするための橋渡しが将来的にできればいいなと思っています。

 試合は、地元カラカスのファン(カラキータというそうです)の大声援を受けたレオーネスが2勝1敗で対戦成績はマガジャーネスの3勝2敗となって、舞台を再びバレンシアに移します。

 もちろん、もう少しベネズエラにいたい気持ちもありましたが、こんなに素晴らしい野球を見せてもらって、突然の訪問にもかかわらず皆さんにものすごく良くしていただいて、これ以上贅沢を言ってはバチがあたると思い、強盗被害に遭う前に予定通りベネズエラを出国することにしました。

 残念ながら、こういった状況ですので、今回の訪問が最初で最後かなと思って入国しましたが、3日目くらいには次はいつ頃、どうやって戻ってこようかと考えている自分に気づきました(笑)。
 もし、また戻ってくることができたなら、次は少年野球を中心に選手の育成方法を見てみたいなと思っています。

 危険も一杯ですが、魅惑の国にハマりそうな予感です!?

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『世界中の子供たちに夢を与える選手、ホセ・アルトゥーベ!』

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 ベネズエラのウィンターリーグ球団、ナベガンテス・デ・マガジャネスでは、現在メジャーリーグでスーパースターとして活躍している選手も以前プレーしていたようですが、今回の滞在中にフェリックス・エルナンデス選手(マリナーズのエースとして、29歳ながらすでに143勝)、ホセ・アルトゥーベ選手(165センチというメジャーで最も背の低い選手ながら2014年にアメリカンリーグ首位打者)がふらっと遊びに来て、話をする機会を持つことができました。

 アルトゥーベはもちろんですが(自分より10センチも低いです)、フェリックスも私服でいるとすごい華奢に見えます。話してみると、2人ともものすごくフレンドリーで、全く壁を作らず、同じ目線で話をしてくれます。自分はメジャーリーガーなんだから偉いんだという雰囲気はこれっぽっちも出さず、単なる野球好きのお兄ちゃんと雑談しているという錯覚におちいるくらいです。

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 (フェリックスも意外と小柄です。隣の人のお腹の方が気になります、汗。)

 ドミニカの選手たちもそうですが、現役バリバリのメジャーリーガーたちが、まるで昔からの友達のように話してくれることに驚かされます。その姿勢こそがまた彼らの魅力となり、周囲からのリスペクトも増していくのだと思います。
 会社でもクラブでもちょっと人の上に立つと、人よりいい成績を出すと偉そうにしたがる心を戒めないといけないなと、彼らに接して改めて思います(自分もそうですが、胸が痛い人もいたりして、苦笑)。しかも、2人ともまだ20代!とんでもない年俸を手にしても、野球少年のままの彼らに尊敬の念しかありません。

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 アルトゥーベ選手にはどうしても伝えたかったので、少しお話ししました。
 『自分は日本で子供たちの野球指導に携わっていて、君の話を良くしているんだ。小さくたって、こんなに立派に活躍しているアルトゥーベっていう選手がいるんだよ!って。まさか会えるとは思っていなかったので、今日すごくうれしいよ!』と伝えると、彼もすごく喜んでくれました。ただ、彼は小さいことをまるでハンデとも思っていない(そもそもハンデになると考えた事すらない)ような表情をしていたことが何より印象的でした。

 このアルトゥーベ選手が世界中に証明してくれているのかもしれません。とにかく持っているものを最大限発揮すれば道は開けるのだと。最初からあきらめることは何もないのだと。それは野球、スポーツはもちろん、どの世界にも通じるのだと。

 彼の活躍の様子、成長してきた街の風景は下記のドキュメント番組で!
 https://www.youtube.com/watch?v=4C1x1vbaUCA 

 番組中の彼の言葉が印象的です。
 『自分自身を信じられなかったら、誰も君を信じることはできないよ!夢を追い続けて生きていくんだ!そうすれば誰も君にブレーキをかけることはできないよ!』

 今回、このような機会をいただいたことに感謝して、また学んだことを還元していきたいと思います!
 

『ベネズエラ・ウィンターリーグ』

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 1月2日より南米のベネズエラに滞在しています。
 ミゲル・カブレラ、フェリックス・エルナンデス、ホセ・アルトゥーベ、パブロ・サンドバルなど、メジャーリーグのスーパースターをたくさん輩出している南米大陸で一番の野球の国です。

 まずは首都から第3の都市、バレンシアに移動して、ここを本拠地とするナベガンテス・デ・マガジャネスと首都を本拠地とするレオーネス・デ・カラカスの試合を2試合観戦です。

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 ここに来るまで知らなかったのですが、この両チームは国内で1・2を争う人気チーム同士の対戦のようで、プレーオフということもあってスタジアムはほぼ満員です。

 私は、ナベガンテスで働いておられるトレーナーの方(初対面ですが、すごく面白い方です♪時間がある時はウクレレ片手に歌を歌って、小銭を稼いで、ヒッチハイクで世界中を旅しているとか・・・、同い年ですが日本の生活への復帰は不可能ですね、笑)のご厚意により、ベンチの中で試合を見させていただくことになりました。

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 これまでドミニカ共和国で野球を見る機会があり、同じスペイン語圏ですので、ここに来るまではベネズエラの野球もそう変わらないかなと思っていました。危険をおかしてまで来る必要はないのかなと。でも、来てみれば、やはり『来なければわからなかった!』の連続です。

 出場している選手の個々のレベルは若干ドミニカの方が上かな?と思いますが、ベネズエラの方が試合全体がスムーズで、余計な時間がなく、すいすい試合が進んでいきます。選手もお客さんも試合に集中できる良い空気が流れています。ドミニカは本当にのんびりしているので、試合が長いです・・・。
 意外かもしれませんが、ドミニカ出身の選手はどちらかというと長距離打者が少なく、短距離・中距離の打者が多いのですが、ベネズエラの打者を見ていると中・長距離の打者が多いなという印象です。
 先発投手が早々に降板して、何人もかけて継投していくドミニカ野球、先発がある程度のイニングまで投げる(もちろん球数は重視されていますが)ベネズエラ野球、投手起用法も違うようです。

 何より、教養の高いベネズエラ人!ドミニカの場合は質問してもきちっと答えが返ってくる確率があまり高くないのですが(同じスペイン語圏の人々もドミニカ人は質問に答えが返ってこないと嘆いています。それがまた彼らのおもしろいところですが、笑)、ベネズエラの人はまともに返事が返ってきます(当たり前?)。試合後のベンチもこんなにきれい!日本では当たり前のことですが、これはなかなか世界ではお目にかかれないです!!

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 改めて言うまでもありませんが、ドミニカもベネズエラも日本も、それぞれに長所・短所があると思います。文化も習慣も社会も人種も違うわけですので、違って当然です。大事なのは、自分たちの長所・短所を理解して、いかに持っている力を発揮できるように取り組むか、育成していくかということだと思います。

 人口1000万人から毎年メジャーリーガー150人超のドミニカ共和国、人口3000万人から100人超のベネズエラ、日本は1億2000万人からたった10人です。
 我々はもちろんドミニカやベネズエラの人々とは違う民族ですが、我々もきちんと持てる能力を発揮することができれば、彼らと同等、またはそれ以上の成果を出せるのではないかとも思っています。そのためにも、世界の野球から学び、彼らの成功へのプロセスから謙虚に学ぶことも忘れてはならないことだと改めて思います。

 まだ、たった2日で何もわからない状況ですが、様々なことを考えさせてくれるベネズエラ滞在になっています。このような機会をいただいているみなさんに深く感謝です・・・。

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『初上陸!ベネズエラ!!』

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 1月2日、コロンビアのボゴタ経由でベネズエラに入国しました。
 ベネズエラは、(自国アメリカを除いて)ドミニカ共和国に次いでメジャーリーガーを輩出している国で、今年も100人を超える選手がメジャーに昇格してプレーしています。

 ミゲル・カブレラ(2012年にアメリカンリーグ・三冠王)、フェリックス・エルナンデス(29歳ですでにメジャー143勝のマリナーズのスーパーエース)、最近ではホセ・アルトゥーベ(メジャーで最も身長の低い選手ながら2014年にアメリカンリーグ首位打者)など、数々のスーパースターも輩出しています。
 エルネスト・メヒーア、アレックス・カブレラ、アレックス・ラミーレス、ペタジーニなど、日本のプロ野球でも活躍している選手、活躍した選手もたくさんいます。

 野球の前に、ベネズエラという国について・・・。
 チャベス前大統領(社会主義者)の死後、原油価格の低下とその後の政治の腐敗により、国内は混乱状況に陥り、ここ数年では世界最高のインフレ率になっています。
 物価はみるみる上昇し、給料はそこまで上がらないため、多くの国民が生活に苦しんでいるのが現状です。
 政府は1ドル=6.35ボリーバル・フエルテに固定しているものの、ボリーバルから米ドルへの両替は一切できず、インフレが続き価値が下がり続けるボリーバルではなく、米ドルを求めて闇両替を行いたい人が増え続けるため、現在の闇レートでは1ドル=830ボリーバル・フエルテと100倍以上の差になっています。

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 40ドルほどで、この札束!

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 ちなみにけっこうきれいなホテルの場合、13,400ボリーバル・フエルテで一泊この札束。闇レートだと16.75米ドルで宿泊できます。公定レートだと1泊2000ドル近く(20万円くらい?)になってしまいます。

 そして、生活に苦しみ続ける一般の国民と(おそらく平均月給は10ドルくらいです・・・)、そのドルを持っている外国人や、一部の富裕層との間に大きな差が生まれ、さらには給料だけでは到底生活できない警察までもが、旅行者や富裕層(日本人も当然狙われる方に入ります)を狙った凶悪犯罪を繰り返す状況になり、経済だけでなく治安も非常に悪い状況にあります。(当然ですが、すべての国民や警察が犯罪に加担しているわけではなく、大半の方は人懐っこくて優しい方々ですが、犯罪者も多いため、警戒心を持って、まずは疑ってかからなくてはならないところが悲しいところです。)

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 (実はこのわずか300メートルほども危ないと言われている、国際線ターミナルと国内線ターミナルの間)

 この闇両替、見つかるとしょっぴかれるそうで、なかなか一般には両替してくれません。宿泊中の結構大きなホテルでもしてくれません・・・。隠れてこっそりやらないといけないのですが、このこっそりも声をかけられた人と両替しようとすると、お金を持っていることを証明するようなもので、そのまま拳銃を突き付けられて丸裸にされてそのあたりに捨てられるケースが多々あるそうです(それでも命が助かるだけマシかもしれませんが・・・)。

 今回は首都カラカスの空港到着後、タクシーで第3の街・バレンシアへ向かいました(高速道路を突っ走って2時間です)。国内でも特に治安の悪いという噂のカラカスを避けようと思っていたのですが、タクシーの運転手が道中で、『カラカスよりバレンシアの方が治安悪いよ・・・』と。思わず絶句してしまいました。

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 ホテルに荷物を置いて、ウィンターリーグ開催中の球場へ。ここにトレーナーとして働いておられる日本人の方がいるとお聞きして、訪問しました。その後、チームメートや球団職員の方々を紹介していただいて、その方々からも色々とベネズエラでの過ごし方(大げさに言えば生きのび方)をレクチャーしていただいて・・・、彼らと話しながらこの話を聞いていなかったら、どういう恐ろしい目に遭っていたか・・・、と頭がクラクラしました。彼らにあまり迷惑をかけたくないなとは思いつつ、この地では恩をありがたく受け取って、いずれまたどこかで返すしかないかなとも思い始めています。

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 試合はこの日からプレーオフが始まり、国内で1・2の人気を争う、バレンシアのナベガンテス・デ・マガジャーネスと首都のレオーネス・デ・カラーカスの対戦で、球場はほぼ満員で大変盛り上がっていました。野球選手も観客も野球の時だけは、普段の生活を忘れて心から楽しんでいる様子です。
プレーのレベルも非常に高く、かつドミニカの野球とは予想以上に違っていて非常に勉強になります。

 そのベネズエラ野球の話は、次回以降のブログにて・・・。
 まずは今日も無事、ホテルに戻ってこられることを願って出発です・・・。
 

『時を分かち合う』

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 グローバル化に伴い、日本でも海外でも、他国の文化を理解しなくてはならない場面は昔に比べて格段に増えていると思います。

 野球の世界でも、日本のプロ野球だけではなく、メジャーリーグに挑戦する選手が増えてきていますが、実際に自身の持っている力を発揮できるかどうか、技術や体力はもちろんですが、異文化を理解し受け入れることができるかどうかも重要なポイントだと思います。

 私が野球指導の勉強をさせてもらっているドミニカ共和国にも彼らの文化・習慣があります。基本的におおらかな人々ですので、必要以上に気を遣う必要もなく、これからメジャーリーグに挑戦するという日本の選手が、ここで異文化を受け入れる練習をすることは非常に有意義なことだと思います。治安も比較的よく、気候も良い、野球のレベルも高い、これらを合わせれば、こんなに良い環境は他にないかもしれません。

 では、ドミニカ共和国の文化・習慣とはどんなものでしょうか?もちろん、それは簡単に説明できない(体感するしかない)くらいたくさんあるし、すぐには理解できないのですが、その中の一つに『時間を分かち合う、共に時間を過ごす』ことを重視するという文化があるように感じます。

 休日や、平日も夕暮れ時(早い場合は昼過ぎ)にもなれば、人々はおもむろに公園に足を運び(自然と集まってきて)、お酒でも飲みながらああでもないこうでもないとおしゃべりを始めます。他愛もない話、冗談も多く、日本人としてはこの話の先に何があるのか?大人たちが集まって、何時間もおしゃべりするということは、何らかの目的があるのでは?と思ってしまいます。が、何時間たっても結論にいたることなく、気づいたら適当に解散しているという感じです。

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 日本では、話すからには何か要件がある、要点をうまく説明して、できるだけ早く解決することが良しとされますが、ドミニカ共和国でそれをしてしまうと、『なんだこいつ?自分の用件だけ話してさっさと帰っちゃうのか?おれたちはアミーゴじゃないのか?』となってしまいます。

 自身もコロンビアに暮らし始めた時は、これがなかなか理解できませんでした。用もないのにこの人たちは何で集まって何時間も話し続けるのか?言葉もよくわからないし、こんなところに何時間もいるのはつらい!と。でも、いつの間にか、ある意味日本人にとっては無駄で、ドミニカ共和国人・ラテンアメリカの人々にとっては大切な文化に慣れ親しむようになっていました。

 時間があれば仲良くなったアミーゴのところへ足を運び、時間を忘れてダラダラとおしゃべりをする、冗談に腹を抱えて笑う、お腹が空けば何かさがして食べるということを繰り返しています。

 『Compartir el tiempo. 時を分かち合う。』
 これが彼らにとって実はとても大切で、共に過ごせば過ごすほどアミーゴの仲は深まって行くのだと思います。

 メジャーリーグを目指す選手にとっても、一人の社会人としても全てが勉強になるドミニカ共和国。2016年も日本からドミニカ共和国を訪れる人が増えると嬉しく思います🎶

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