『0から1へ』

20151223 kodomo

 ドミニカ共和国のウィンターリーグ球団“エスコヒード”でのプレーを終えて筒香選手が帰国の途へ、またエスコヒードへの練習参加やLAドジャースのアカデミーで27年間にわたり指導されているアントニオ・バウティスタ氏の指導を受けた乙坂・松井両選手も順次帰国の途についています。

20151223 dodgers

 私自身、2012年に初めて訪れたドミニカ共和国。冬のウィンターリーグでは現役メジャーリーガー、メジャーを目指す若手有望選手らが思うがままにプレーを楽しみ(投手はどんどんストレート勝負、打者もフルスイングで、内野手は軽快なファインプレーの連発)、観客もラテンミュージックと共に思い思いに野球を楽しむ姿を目の当たりにしました。その時、現在阪神のマウロ・ゴメスがエスコヒードでプレーしており、自身もスタンドで彼の逆転サヨナラホームランを目の当たりにして、スタジアム中が熱狂していたことをつい最近の出来事のように思い出します。ドミニカの野球の底知れぬポテンシャルを感じた瞬間でした。

20151223 kankyaku

 また、夏のドミニカンサマーリーグでは、MLB30球団のアカデミーで淡々と黙々と将来の活躍に向けてプレーを続ける10代後半の若い選手たち、それを暖かく見守り続ける指導者たちのあり方に、日本の高校野球の目先の勝利至上主義との大きな違いを感じ、ぜひこの彼らの前向きで先を見据えた姿勢を、日本の野球、野球に限らず日本社会が今抱えている問題に、うまく活用できないだろうかと思ったことを今でも覚えています。何しろ、日本の人口よりはるかに少ない1000万人から毎年150人以上のメジャーリーガーを輩出し続ける国ですから、学ぶことがないはずがありません。

 あれから(たった?)3年、筒香選手がそのエスコヒードで実際にプレーし、日本の将来有望な3選手が指導経験豊かなバウティスタ氏から指導を受けるまでに至りました。この彼らの経験が活きてくるのは来年のシーズンではなく、もっともっと先なのかもしれません。それでも、彼らにとってこれからの大きな財産になることは間違いないと、私自身もそばにいながら日々感じていました。

20151223 shiai

 今回の出場を大きくサポートしていただいたエスコヒード球団の方も、LAドジャースのバウティスタ氏も同じようなことを言ってくれます。
 『我々が出会う前にこんなことが起こるとは誰も何も想像できなかった。我々が出会ってからも、周りの人々は日本で実際に活躍している打者(投手が教育目的でウィンターリーグに派遣されるケースはこれまでも有り)がウィンターリーグに参加して出場すること、ドミニカのメジャー育成機関のメソッドを日本のプロ選手が学ぶことを想像する人はほとんどいなかったと思う。でも、実際にこうやってできたんだ。彼らの他にも、我々の出会いをきっかけに多くの日本の野球指導者や関係者がドミニカ共和国の野球を学びたいと訪問してくれた。こんなことが実現すると、3年前に誰が思っていただろう?
 やはり、何事もやる前から不可能だと思う必要は全くないんだよ。誰もやらないから、やめておこうと思う必要もまったくない。大事なことは誰も考えていないこと、想像もしていないことに対して、その最初の一歩を実際に踏み出すこと、そしてそこからの前進を少しでもいいからあきらめずに進めていくことなんじゃないかな。』と。
 
 今回も、正にアミーゴ社会がなせるわざ、もともとは誰のつてもなく、たまたま知り合ったドミニカ共和国の方々のお陰で、日本から訪問した方々が充実した日々を過ごすことができたのではないかと思います。そんな方々の訪問・滞在にあやかり、自分自身もちゃっかりたくさんの勉強をさせていただきました(役得かな)。

20151223 hyuma JC

 もちろん、至らない点もたくさんあったと思います。完ぺきではなかったと思います。でも、何もアクションを起こさなければ何の変化もなかったところに、『0から1』の変化を起こすことはできたのではないかなとも思います。大切なことはこの1をこれからどう大きくしていくかということ、そしてこれからも様々なところで『0から1』の変化を起こし続けていくことかなと思います。

 変化を恐れず行動を続けていけば、日本の野球ももっともっと良くすることができる!野球を通じて社会ももっともっと良くすることができる!私自身もそのような勇気をたくさんもらえるドミニカ滞在になっていると実感しています!ますますパワーアップして帰りたいと思いますので、みなさん暑苦しいと思わずに変わらぬお付き合いよろしくお願いします!

20151223 kodomo

 追伸:
 エスコヒードは筒香選手の合流後、打線が奮起し、レギュラーシーズンを突破してプレーオフに進んでいます。プレーオフ進出の祝勝会は、それはそれはすさまじいものでした・・・(汗)。 

『人生すべてが捨て身!?』

20151216 centro

 朝、サントドミンゴの街中をウォーキングしていると、突然後ろから声をかけられました。

 『あなたは日本の野球のスカウト?僕15歳で左投手なんだけど、これから契約できる球団を探しているところなんだ!ぜひ、一度僕のピッチングを見に来てよ!』

 一歩ホテルを出れば、こんなことは珍しいことではなく、むしろ日常茶飯事です。
 もちろん、そんな簡単に契約にこぎつけるわけはないとはわかっていながら、万が一のこともある、少しでも可能性があるなら彼らは声をかけてきます。
 『うちの息子のプレーを一度見てくれないか!?』もはや挨拶のようなものです。

 しかし日本のどこに、見ず知らずの大人を呼び止めて(しかも外国人を)、自身の契約について話す15歳の子供がいるでしょうか?
 もちろん、社会が違う、環境が違う、文化も違う。でも、彼らの積極性から我々が見習うべきものもたくさんあるのではないかなと思います。

20151216 zurdo

 10分くらい野球についての話を歩きながらした後、『じゃあ僕、球場までアップをかねて走っていくからまたね!』と走り出した少年。まだまだ無力な自分は彼の背中を眺めながら、ただただ幸運を祈るばかりでした。

 失敗を恐れない、常にチャレンジする、行動する、失敗してもまたチャレンジする、ドミニカの方々から学ぶべきこと日々多しです。


 

『バモス エスコヒード!!』

20151211 ciriaco

 今回のドミニカ共和国滞在では同国ウィンターリーグ(プロリーグ)に出場しているエスコヒードという球団と共にお仕事をさせていただいています。

 日本人選手のコーディネート、試合時の通訳、その他もろもろ。夜遅くまでの試合(試合開始が7時半で終了がいつも真夜中)や遠征試合と、時間的拘束はけっこうありますが、とにかく勉強になる!というのが一番の印象です。

 ウィンターリーグと言えば、日本では選手の育成の場というイメージが強いかと思いますが、実はそうでもなく、プロのリーグ・球団として興業がかかっていますので、どこのチームも成績を非常に重視しています。出場する選手も現役のメジャーリーガーや、将来有望な若手マイナー選手がたくさんいます。

20151211 tsutsugo dageki

 その中で選手たちが最大限の力を発揮できるように、監督・コーチはどのように選手とコミュニケーションをとり、どうやって彼らの自主性を引き出しているか、チームがより良い状態で試合に臨めるよう編成側がどのようにマネージメントしているか。もちろんほんの数パーセントしか見ることはできていないと思いますが、それでも監督さんや編成の担当の方の近くで仕事をする機会をいただき、自身にとってもありがたい経験をさせていただいています。ハプニングもたくさんありますが、それもまた勉強の機会かなと。

 エスコヒードは、プレーオフ進出のボーダーラインからなんとか抜け出し3位をキープ。指導者も球団職員も選手たちも気持ちいい方々ばかりなので、引き続き学びながら、少しでも彼らの力になることができればと願っています。

 バモス!!エスコヒード!!ガナモース!!

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