『お互いの力を引き出す!それが子どもたちの成長につながる!』

20158決勝 3人

 堺ビッグボーイズ・2015年アメリカ遠征最終日は各カテゴリーの決勝トーナメントです。
 同行した2年生(U14)の準決勝の試合は前日に続いて大熱戦。
 ものすごいガタイのメキシコ系チームに対して、互角に戦いました。
 1対2の1点ビハインドで迎えた最終回、2アウト・ランナーなしから同点に追いつき、タイブレーク(こちらは0アウト2塁からプレーするそうです)に入った後も、再三のサヨナラのピンチをファインプレー連発でしのぎました。

20158決勝 ベンチ

 午後からのU16の試合も含めて、LAのチームで印象に残っているのは各バッターの徹底した攻撃姿勢です。カウント3ボール0ストライク以外では、ストライクゾーン付近にきたストレート系の投球には必ず強いスイングをしてきます。2年生・3年生で合計7試合行いましたが、強いチームも少しレベルの落ちるチームでも、とにかく見逃しのストライクがほとんどないんです。

 力強く、インサイドアウトのスイングをするので、少しタイミングがずれたものがファールになったり、空振りになったりします。日本のように当てにいく、ゴロを転がしにいくことをしないので、打ち損じがフェアーグラウンドに転がってアウトになることが少なく、ファールか空振りでまた打ち直すことができるんです。追い込まれてもスイングが変わることはほぼありません。三振も内野ゴロも一緒。ならばヒットになる確率が低くなる当てにいくスイングをするよりも、たとえ三振する可能性が高まるとはいえ、力強くスイングをしてヒットを狙ってきます。それを継続することでヒットになる確率が必然的に高まり、勝利に近づいていくんです。実際にそれをベンチで見ていて、野球の試合にもかかわらず、まるで将棋を指している(どんどん詰んでいく)感覚になりました。

 すごいのはお互いそれをわかっていてどんどんストレートをストライクゾーンに投げ込むこと。ビッグの選手も良いバッティングをたくさんしましたが、相手チームのそういった姿勢に、こちらの力をどんどん引き出してもらっている印象でした。そして、お互いが相手の力を引き出しあい、お互いのレベルがどんどん上がっていくことを試合中に実感することができました。日本で同様の取り組み(ストレート系の球に積極的にスイングする)をしたら変化球ばっかり投げられて、お互いの良いところが全然引き出しあえないのではないか・・・、残念ながら現状そう感じてしまします。

 20158決勝 玖珂

 試合はタイブレーク2イニング目も0アウト2・3塁のピンチを、三振とファインプレーで2アウトまでこぎつけました。ここで打席に立ったのも大きな体のバッター。当然のようにフルスイングでとらえた打球はレフトの頭上をはるかに超えるサヨナラヒット!ビッグは残念ながら準決勝敗退になってしまいました。

 野球には必ず勝った負けたがあるけれど、お互いがお互いの力を引き出し合えたことが何よりの財産になったと思います。アメリカだから、ラテンアメリカだからできるのではなく、日本でも取り組み方次第でできることを確信しました。投手はどんどんストレート系の球をストライクゾーンに投げ込む、打者は常にそれを力強く振りにいく(ボールだと思ったと言って見逃さない)、その結果に対して(打たれても打ち損じても)指導者が選手に対してネガティブなことを一切言わない、これを徹底することができれば日本の野球レベルはもっと上がると思います。そして、野球だけでなく人生においても何事も積極的に挑戦できる人へと成長できると思います。

20158決勝 挨拶

 今回、子供たちと一緒に実際にアメリカ・LAの大会に参加させていただき、正に色々なことを肌で感じることができました(やっぱり外で見ているだけと、実際に中に入ってやるのとでは感じ方が全然違います)。このような機会をいただいた皆さんに大いに感謝しながら、今後の活動につなげていきます!
 
20158決勝 集合
 

『今年、世界で一番楽しい試合!』

予選リーグ たみお

 堺ビッグボーイズ・LA遠征の後半、今年は初の試みとして地元の大会に参加しました。
 3年生はU16、2年生はU14のカテゴリーでそれぞれ参加しています。
 自分は2年生の試合に同行しましたが、それはそれは素晴らしい試合になりました。

 今回の大会は各カテゴリーに9チームがエントリーし、3つのリーグに分けて予選リーグが行われました。まずは初日に変則ダブルで各チームが2試合ずつ行い、その結果をもとに翌日決勝トーナメントが実施されます。

予選リーグ 集合写真

 予選リーグで対戦した2チームはなかなかの強豪、1試合目は後半突き放して9対1で勝利したものの、2試合目は前半のリードをジリジリと詰められ1点リードで最終回を迎えました。

 自分は相手ベンチのすぐ目の前、一塁のベースコーチをしながら参加していましたが、とにかく2チームとも指導者が気持ちいい方々なんです。タイムがかかっているときはもちろん、プレー中でもどんどん声をかけてくれます。それもポジティブなことばかり。日本の子供たちのことをものすごくほめてくれたり、日本からやってきたチームと対戦できてうれしいと言ってくれたり、対戦するチームに対する敬意によって、こちらも気持ちよく試合に参加させていただきました。

 2試合目は中盤から接戦となり、お互い自身のチームの選手を鼓舞しながら、指導者同士は『本当に良い試合だね!子供たちも楽しんでくれていてうれしいね!』という会話をずっとしていました。

予選リーグ ゆきお

 最終回(7回)の表、1点を追う相手チームは2アウト2・3塁からセンター前ヒットで逆転!一方、その裏、息を吹き返した堺ビッグボーイズも2アウト満塁と逆転サヨナラのチャンス!しかし、カウントはすでに2ストライク。
 相手チームのコーチが僕のところに来て、『三振で試合終了だよ』って笑いながら言ってくる。『僕は自分の子供たちを信じているから、彼はきっと打つよ!』と返す。『じゃあ、おれも自分の選手を信じているからきっと三振を取るんだ!』って、またまた笑いながら返してくる。こんな緊迫した場面で、日本で指導者同士が笑いながら、こんな会話をするなんてあり得るやろうか?とふっと我に返って考えてしまいました。

 打っても打たなくても、勝っても負けても、決めていたことは試合が終わった瞬間に『ナイスゲームだった!ありがとう!』と言って相手の指導者とハグすることでした。

 ビッグの選手が放った打球はセンターの頭を大きく超えて、劇的な逆転サヨナラ勝ち!悔しいはずの相手の指導者はそんな素振りを一切見せずに、僕と同じ言葉を発して力強く抱きしめてくれました。『ナイスゲームだ!ナイスゲームだ!』と大声で叫び続ける相手チームの保護者の方々、『ありがとう!』とあどけない笑顔で挨拶してくれる相手チームの選手たち、試合なので勝ち負けはあるけれども、お互いの力を出し合うという素晴らしい空気がそこにはありました。

 こんな環境で野球を続ければ、日本の子供たちももっともっと野球がうまくなる、何より野球をどんどん好きになれる!
指導者も選手も、全身で色々なことを勉強させていただきました。

予選リーグ コーチ


 決勝トーナメントの様子は次回のブログで・・・。
 

『中学生のメジャーリーグ観戦』

Angels 1 2015

 ドミニカ共和国からロサンゼルスに移動し、野球クラブチーム(中学生)堺ビッグボーイズのLA遠征に帯同しています。今年は2・3年生20名が参加し、野球と観光を大いに楽しんでいます。

 前半戦のビッグイベント(?)はメジャーリーグ観戦、LAドジャースは遠征中のためスタジアムツアーのみ行い、同じくLA近郊のアナハイムを本拠地とするエンゼルスの試合を観戦に行きました。移動の車の中では爆睡していたのに、大きなスタジアムが見えてくると子供たちも大興奮です。

Angels 4 2015

 この日はシカゴ・ホワイトソックスとの対戦。前半は両投手がなんとか持ちこたえて接戦に、後半ホワイトソックスが突き放す試合展開になりました。

 フェンスが全くといっていいほどない開放的な観客席(おかげで試合前の打撃練習中に何人もが飛んできたボールをゲット!)、150キロを軽く超える剛速球の投手たち、それを豪快なホームランにしてしまう力強いスイングの打者たち、子供たちの印象は様々です。

Angels 3 2015

 でも、意外と多かったのが『内野手の守備が日本と全然違う!』という反応でした。
 エンゼルススタジアムももちろん天然芝で、日本の人工芝や土のグラウンドよりははるかに打球をさばくのは難しいはずなのに、きわどい打球を両チームの内野手、特にショートストップの選手がどんどんさばいていきます。

 これはヒットかなという打球をどんどんアウトに、ランナー1塁からチャンスが広がると思われる打球がなんとダブルプレーに!ショート付近にボールが飛ぶたびに、次はどんなプレーを見せてくれるのだろうとみんなワクワクします。

 そして、そんな両チームのショートは決して体の大きくないラテンアメリカの選手なんです。エンゼルスはドミニカ共和国のエリック・アイバー、ホワイトソックスはキューバのアレクセイ・ラミレス。彼らは決して体の大きな選手ではありません。アイバーなんかたぶん170センチくらいしかないし、ラミレスは僕より細い(自分が太り過ぎか、笑)。

 ホワイトソックスは先発のホセ・キンタナ(コロンビア出身)を含めて先発10人中7人がラテン系選手でした。もちろん大きな選手もいるけれど、そんなに大きくない選手もたくさんいます。そんな選手たちが自分たちの体をうまく使いこなして世界最高峰の舞台でプレーしている姿を見て日本の子供たちも何かを感じていると思います。

 とにかく選手も観客も野球を楽しんでいる!子供たちと一緒に素晴らしい試合を観戦できてよかったです♪

Angels 2 2015
 

『日本からドミニカ共和国への渡航者が急増中!?』

2015 8 Roa 3

 昨年末の2ヶ月弱の滞在で13名、この夏の1ヶ月だけで10名、合計23名の方が日本から遠く離れたドミニカ共和国まで来てくださりました。
 日本の野球をもっと良くするためのヒントがカリブの島国にあるのではないか、ぜひ自分の目で確かめ肌で感じたい・・・、みなさん決して安くはない渡航費を自身で捻出してお越しいただいています。

jb 2015 8 final 1

 そして、みなさん言われるのが、『来て良かった。』『来なければ気づけなかった。』ということだと思います。

20158 バケツ野球

jb 2015 8 final 2

 自由奔放な小学生たち、力強いスイング・素早いグラブさばきの若手選手たち、どの年代でも短期的結果を求めずに暖かく見守り続ける大人たち、そしてそんな環境から飛び出してくる多くのメジャーリーガーたち。日本の常識では考えられないものがそこにはあり、でもそれがドミニカの常識であり結果も伴っているんです。そして、我々はどう変わらなければならないのか?みなさんそれぞれに感じていただけているようです。

20158 筒兄 JB

 野球だけでなく、四六時中飛び交う冗談と笑い声、大人も子供も満面の笑顔、人のためにふんだんに時間を使う心遣い・・・。もちろんドミニカが100で日本が0ではなく、ドミニカも開発途上国として様々な問題があります。むしろ経済状況は日本よりはるかに悪い状況です。それでも、人々は明るく元気に、笑い声と笑顔をそこらじゅうに振りまいて今日も暮らしています。

20158 ロア

 自ら動いて、時間をかけて、財布を痛めて(笑)、来られた方々の行動は必ず変わります。
 日常から大いに学ばせてくれるドミニカの方々に感謝しながら、日本の子供たちがもっともっと好き放題、やりたい放題、成長できる環境をみなさんと作っていきたいなと思います。

 さて、次回はあなたがドミニカに来る番ですよ(笑)!?

2015新里 マテオ

jb 20158 sakai bb

bautista 2015 8 bocamarina
 

『とにかく、ゆっくりじっくり。』

20150816 Bautista

 今回のドミニカ共和国滞在1か月、最終日はいつもお世話になっているアントニオ・バウティスタさんと過ごすことができました。
 LAドジャースのドミニカ共和国アカデミー・コーチとして27年間勤務されていて、数々のメジャーリーガー育成に携わられている方です。

 日本から訪問している堺ビッグボーイズのコーチらと食事をしながら、彼のこれまでの経験に基づく選手育成方法を勉強させてもらいました。

 これまで自分自身、何度も何度も丁寧に時間をかけて彼の話を聞かせていただいているのですが、何度お会いしても彼の話からは新たな発見があります。

 昨日の試合でドジャースのショートの選手がものすごく素早いプレーで打者走者をアウトにしたが、あのようなプレーはどのようにしてできるようになるのかという質問に対する彼の回答に、今回もまた新たな気づきをいただきました。

 『何事も少しずつ少しずつうまくなっていかなければならないんだ。彼のプレーはものすごく速く見えたかもしれないが、実はゆっくりと時間をかけてプレーをしていくことで、あのような素早い動きに見えるようになるんだ。指導者として大切なことは、すぐに素早い動きを選手にさせようと思わないことだよ。そして、たった数年のうちに良い選手にしようと思わないこと。すぐにできるようになった場合、新たな問題に直面した際に選手はうまく対応できなくなって、いずれ彼はその問題の出口を見つけられなくなるんだ。とにかくゆっくりじっくり、何年もかけて少しずつ成長していく、指導者はとにかく焦らずにサポートしていく忍耐力が必要なんだよ。』と。

 彼の話を聞いていて、思い返せば野球だけでなく日本社会のあちこちで短期的な結果を求めているような気がします。社会もスポーツも教育も親子関係も?たった2~3年で結果を求めること、そのこと自体が子どもたちの可能性を狭めているのだと思います。
彼が言うように『メジャーリーガーに対しても指導者は忍耐が必要なんだよ。年齢が若ければ若いほど結果を急がずゆっくりじっくり時間をかける。それは当然のことだよ』と。

 彼の話はいつ聞いても、野球はもちろん、すべてのスポーツ・教育・社会、はたまた恋愛(夫婦関係?)まで、すべてに通じているような気がします。でも、それも当然、野球以外のことにつながらないこと、野球にしか使えないことなら、そもそもそんな野球をする意味がないのではないかなと思います。

 今一度、自分自身も焦っていないか、すぐに結果を求めていないか、見つめなおす良い機会になりました。じっくりゆっくり、でも確実に少しずつ成長していきましょう。

 グラシアス、バウティスタ!!
 

『18歳前後の彼らにとって最も必要なことは、勝ち負けよりも様々な経験をすることだ。』

20150803 Dodgers

このブログでも何度か紹介しているように、ドミニカ共和国にはメジャーリーグの30球団全てがアカデミーを開設しています。
16歳以上の将来性豊かな選手がプロ契約をし、練習・試合・英語の勉強などを行っています。

ちょうど6月から8月はドミニカン・サマーリーグと呼ばれるアカデミー同士のリーグ戦が組まれ、5つのリーグにわかれて各球団が72試合行います。マイナーリーグの中で、ルーキーリーグのさらに下に位置する、立派なプロのリーグ戦です。

各球団に約50名が所属していますが、ドミニカの中でもプロ契約してここでプレーできるのは将来性豊かな選手だけ、さらにはベネズエラ・コロンビア・パナマ・ニカラグア・メキシコ・キュラソーなどなど、ラテンアメリカ各国からも同年代の選手が送り込まれてきます。

確かに将来性豊かな選手たち、この年代のラテンアメリカ最高峰の選手たちですので、木製バットながらどんどんホームランが飛び出したり、日本のプロ顔負けのスーパープレーが続出したり。それはそれは見ていて本当に楽しくて、あっという間に時間が過ぎ去って行きます。

一方で、同じバッターでも変化球にはまだまだ全然当たらなかったり、球は速いけどストライクが全然入らない投手がいたり、そんな選手もたくさんいます。

先日、トロント・ブルージェイズの試合を見ていたら、キャッチャーの選手がたくさん後逸していました。9イニング中にワイルドピッチも含めて10球以上は後ろに逸らしていたと思います。それでも、監督・コーチは彼に対して何か注意するでもなく、交代させるでもなく、もちろん怒声を浴びせるでもなく、ただただ試合中はお尻をポンと叩き、後は見守っているだけです。試合は彼のミスも要因となり負けてしまいました。

試合後、監督に「今日はキャッチャーの選手がたくさんミスしていたけど、それに関して何か特別な指導を行うのですか?」と質問しました。
返ってきた言葉は・・・、
「確かに彼はたくさんミスをした。我々ももちろんそれを見ていたよ。でもね、彼らはまだ18歳前後なんだよ。何のためにこの年代の試合があるのか?それは失敗も含めて様々な経験をするためにこのリーグがあるんだ。何も特別なことをする必要はない、これから既に組まれているキャッチング、ワンバウンドのメニューをこなしていけば、何年後かにいずれ彼もいいキャッチャーになるよ。」と、下の写真の監督を務めるマテオさん。

201507 Mateo san


日本の同年代では高校野球・甲子園が全てのように、今の結果を重要視してしまっていると思います。マスコミも社会も指導者も保護者もそういう傾向が強いのではないかなと。ましてやトーナメントなので全く余裕がありません。

一方で、とてつもなくたくさんのメジャーリーガーを輩出しているドミニカ共和国の18歳の野球は、ものずごく静かで涼しくて、たくさんのミスを豪快にしながら、ただただ淡々と将来に向けて能力を伸ばし続けているのです。

トーナメントでその時に盛り上がればいいのか、リーグ戦で様々な失敗も経験しながら大きく成長していく方がいいのか。こんなに小さな国から多くのメジャーリーガーを輩出しているという結果から見ても、子供達の将来を思えば思うほど後者にすべきだと私は思います。

20150803 Gigantes
チャンスにもかかわらず、この豪快な空振り!(写真で伝わるかな~)

目先の結果野球から、将来の活躍に向けた野球へ。改善できることがたくさんあってワクワクします!