ウィンターリーグ(ドミニカ共和国プロリーグ)再開!!

エスコヒード リセイ 2014
 
 ドミニカ共和国をはじめベネズエラ・プエルトリコ・メキシコなど、ラテンアメリカ諸国では主に10月~1月の間に各国でプロリーグの試合が行われます。(キューバは4月頃まで)
 この時期は、アメリカの冬季の期間で選手たちのオフに重なるため、多くのメジャーやマイナーの選手が母国に帰ってプロリーグに出場します。

 その中でも一番盛り上がるのがドミニカ共和国のウィンターリーグで、現役バリバリのメジャーリーガーはもちろん、マニー・ラミレス(MLB通算555本塁打)など懐かしい名選手もいまだに出場しています。

 現在は開幕から2か月間行われる6チーム総当たりのリーグ戦が終了し、上位4チームのリーグ戦がスタートするところで、今年は毎年優勝争いの首都を本拠地とする2チームが早くも敗退してしまいました。(トップ写真のリセイとエスコヒードが敗退。)

 ならば地方まで見に行くしかない!
 首都から車で1時間半、あのロビンソン・カノーの出身地でもあるサンペドロ・デ・マコリスの球場へ。

エストレージャス 1227 1

エストレージャス 1227 2

 5日間のクリスマス休暇が終わり、久しぶりの試合となったためスタジアムは超満員♪
 試合は前半0-0の投手戦。後半戦の初戦のため、お互いエースが登板、打撃陣も試合勘が戻らないのかなかなか点数が入りません。

 ちょっと重たい空気が流れ始めた、4回表終了時の攻守交代。
 いつものように軽快な音楽が流れ始め、ムチムチのチアリーダーが踊り出す♪が、これまた練習不足で全然揃ってない(笑)。そんな時に観客が、『おい、ハポン(日本)、チーノ(中国人)!』と後ろからヤジを飛ばしてくる。しゃあないな~。ひと肌脱ぐか・・・。

 おもむろに立ち上がって、流れているメレンゲに合わせて踊り出す自分♪
 立ち上がって歓声を上げて大喜びしてくれるドミニカ人、満員の観客席大盛り上がり♪
 前方で見ていた日本からの研修生は途中で騒ぎに気づいて、またまた口をあんぐり(笑)。
 
 その後、地元チームが得点を上げて試合が決まりかけたため、7回終了時に帰ろうとすると、観客のみんながスタンディング・オベーションと『まだ帰るな!おれたちと最後まで一緒にいてくれ♪』の大合唱。

 野球の国の野球。
 人と人の間に壁を作らない国民。
 この国の人々の温かさは本当に底なしです♪

 

とんでもない村に迷い込んでしまった!!

フアンバロン 川
 川の向こう側が迷い込んだフアン・バロン村

 こんにちは。今日も太陽がガンガンにカリブの島を照らしています。

 先日、ドミニカ共和国西部のニサオという町を訪問しようと思って、首都からバスに2時間乗って行ってみました。
 1996~2011年までメジャーで大活躍したブラディミル・ゲレーロ(16年で449本塁打、打率.318)の出身地です。
 もちろんアポイントも何もなしで、どんな練習をしているのか突撃です。

 バスはニサオの街の終点に到着し、到着するや否や、バイクタクシーの兄ちゃんがバスの中まで乗り込んできて僕を捕まえます(←これ、こちらの基本行動です)。
 『どこまで乗せていこうか?』(すでに乗るということは勝手に決められています、笑)
 『この辺に野球場ない?』
 『何言ってんだ。野球場がないわけないだろう。いっぱいあるよ。どこの野球場に行くんだ?』
 『いや、どこの野球場でもいいから連れてって。』

 そして連れて行かれたのは、ニサオの街ではなく隣の村の野球場でした。バイクでたった5分やけど、川を渡り実は県もまたいでいたようです。

 ニサオに行くつもりが、隣のフアン・バロン村に気付かずに行ってしまったのですが、実はこのフアン・バロンこそがすごい村でした。

 人口約5000人(赤ちゃんからおじいちゃん、おばあちゃんも含めて)の村なのに、なんと現役だけで5人のメジャーリーガーがいます。
 しかも、フランシスコ・リリアーノ(パイレーツのエース、年俸10億円以上)、サンチアゴ・カシージャー(サンフランシスコ・ジャイアンツの抑え投手)、ペドロ・ストロップ(カブスの中継ぎエース)、フアン・ウリベ(ドジャースのサードでレギュラー)といったそうそうたるメンバー・・・。
 想像してください。あなたの住んでいる町の人口は何人ですか?
 僕の生まれ故郷、大阪府交野市は人口8万人。この計算で行くと、交野市から90人の現役メジャーリーガーを輩出していることになります(もちろん?ゼロです!!)。

 どこの街でも明るく人懐っこいドミニカの人々ですが、小さい村だけあって特にここの人々がまた明るくて親切。コーチたちが、なぞのアジア人を相手にも3秒くらいで心を開いてくれてなんでも教えてくれます。ついつい甘えて首都から通って練習見学させてもらっていると、普通に現れたのが先のペドロ・ストロップ。普通すぎて子どもたちも騒がないので全然気づかないです。

フアンバロン デトロイト
左から2人目がストロップ。投げているのはすでにデトロイト・タイガースとマイナー契約している投手(155KM/H投げるそうです)
(後日一緒に撮った写真載せます)

 『僕、ペドロ・ストロップって言うんだ。よろしくね!』って、まるで少年のように向こうから挨拶してきました。えええ?あんた、メジャーリーガーちゃうの??
 その後も、日本とドミニカの野球の違いについて、子供の頃の話、マイナー時代の話(ちなみに彼はマイナーではショートを守り、21歳から初めて投手に転向)を、まるで昔からの友達のように色々と話してくれました。

 彼もそうやし、来年はアトランタ・ブレーブスでプレーするペドロ・シリアコ選手とも同日首都で話しましたが、とにかくみんなフラットです。

 全くもって、メジャーリーガーの自分はえらい、あなたたちより上なんだっていう素振りを見せないし、多分そんなこと本当に微塵も思っていないような感じです。どんな仕事をしていても、稼いでいる給料の桁が違っても、初対面の人に対しても、全く態度を変えることがありません。

 こちらがメジャーリーガーである彼らに敬意を払うのは当然やけど、彼らもドミニカの野球を勉強したいと村に迷い込んできた謎の日本人に対して、同じだけの敬意を払ってくれます。その彼らの姿勢によって、さらに彼らに対する敬意は深くなります。

 コーチのみんなに、『なんでメジャーリーガーにまでなって、あんなに謙虚で普通に接することができるの?』と聞いたら、
『何言ってんだ(笑)。この町は小さいからみんな子供の頃から知っているんだ。ずっとここで野球を一緒にやって過ごしてきたんだ。ちょっと成功したからって態度変えるようなやつならもうこの村に帰ってこれなくなるようにしてやるよ、ガハハハハ!!!!』だそうです。
『今日はストロップしか来なかったけど、オフの間は他の連中もよくここで練習しているから、またいつでも来いよ!!ウリベなんて、本当にまだまだガキンチョでおもしろいぞ!(本人はもう35歳)』とのこと。
なんだか、日本の感覚で考えるとありえないことの連続で気が遠くなります。

 ストロップに、日本の子どもたちに対して何か伝えてくれる?と聞いたら、
 『僕はショートとしてマイナー契約したんだ。それで6年間マイナーでやったけど全然打てなかった(笑←本当に他人事のように笑ってた)!そして、ピッチャーやるかって21歳の時に言われてそこから始めたんだ。その時は速い球は投げれたけど、カーブもチェンジアップも投げたことがなかった。そこからトレーニングして、カーブとチェンジアップも覚えたんだ。珍しく思うかもしれないけど、そんなピッチャーもメジャーにはいっぱいいるよ。この村出身のリリアーノもずっと外野やってたしね。日本の子どもたちは、その日の試合に勝つために13歳くらいから変化球もいっぱい投げるって聞いたけど、そんなことしなくていいし、したらダメだよ。80%以上はストレートを投げるべきだし、そもそもピッチャーだけじゃなくて、いろんなポジションをやって自分の持っている能力を伸ばした方が良い。野手でそのままメジャーに行けたらそれも良いしね!ポジションを守りながらたまにピッチャーもやればいいんだ。18歳くらいまでは試合形式では1週間に50球も投げればそれで十分!だってそうやって子供時代を過ごしてた人が、今メジャーでいっぱい投手として活躍してるんだもん!』
 とのことでした。
 
 もちろん、目的は彼に会うためにいったんじゃないんです。どうやってこれからの選手を育てているかを見に行ったんです。
 彼ら5人の他にも、すでにマイナー契約を結んでいるこの村出身の選手はたくさんいるし、またその下の世代はまずはマイナー契約を勝ち取るべく日々の練習に励んでいます。

 その練習の様子とコーチの方々の指導に関してはまた後日。
 では、今日も新たなことを吸収するために出発です。

 この村出身の次の世代は彼かな。
フアンバロン子供
 

インプット、インプット・・・

 プログラム 1211

 イアンカルロスロドリゲス 2

 イアンカルロスロドリゲス 1

 この1週間、サントドミンゴにて朝も昼も夜も野球三昧。

 街の中心に大きなスポーツ公園があり、たくさんの選手たちがメジャーを目指して練習に励んでいます。

 何面もあるグラウンドの近くを歩いていると、どこからともなく声がかかります。『おい、うちのプログラムを見て行けよ!』といった具合で、色々な指導者から誘われます。このプログラムというのは13-20歳くらいの選手たちがマイナー契約を勝ち取るために、個々の能力を伸ばす練習を行うチームのようなものです。

 もちろん16歳と半年を過ぎたら解禁になるメジャー球団とのマイナー契約を勝ち取るために激しい競争があるわけですが、日本人が想像する『ハングリー精神』や、そこから生まれてくる絶対に契約を勝ち取ってやるんだ!という『悲壮感』は漂ってきません。マイナー契約を勝ち取るために日々練習しているんでしょ?と選手や保護者に聞いても、『まあ、神様が望むならね』と、実に力みなく答えます。

 日本人が想像している体格の違い、身体能力の違いもさほど感じません。むしろこの年代では日本人の方がうまく感じるくらいです。ただ、打撃にしても守備にしても、練習の中で常に力強く、そして無駄な動きを極力減らして、自身の持っている力を最大限ボールに伝えられるような練習を繰り返し行っています。

 練習時間は短く、打撃・捕球・送球の数もそんなに多くありませんが、上記のことを意識した集中力と向上心はすさまじいものがあるなと感じています。その日々の積み重ねが大人になった際、メジャーに到達した際にはもの凄い差になっていて、その過程を見ていなかった者からしてみれば、『彼らの身体能力は違う。我々には決して真似できない。』と感じてしまうのではないかなと思います。

 まだまだ、わからないことだらけですし、簡単に理解できるものではないから、もっと知りたい勉強したいという思いも出てくるのだと思います。
 引き続き、今日も明日もインプット、インプット・・・。
 それでは、今夜はこれからウィンターリーグを見に行ってきます!
 

学び続けるということ

ドジャース 2014

アキチーズ 乙坂

ソーサ ゴンザレス

 先週1週間は、日本から5名の方がドミニカ共和国を訪問されました。
 日本でグローブを開発・販売されている方、スポーツ用品の販売を行われている方、少年野球に携わっておられる方、そして現役のプロ野球選手たちも。
今年だけで150名を超えるメジャーリーガーを輩出しているこの国に、学びと発見を求めて来られました。

 空き地(草むら)からメジャーを目指す子どもたちと一緒に練習参加させてもらったり、そのチームの試合にも出させてもらったり、メジャーリーグ球団のアカデミーでのトライアウトと指導・練習見学や指導者との意見交換会、ウィンターリーグでプレーするメジャーリーガーやマイナーリーガーとの合同練習・試合見学やグローブに関する意見交換など。また、野球だけではなく、頭を突っ込まないと前に進めない運転の粗さや、物売りが引っ切り無しにやってくる街やビーチも体験。

 皆さん、はっきりとおっしゃられることは『やっぱり来なきゃわからなかった。日本の物差しでは到底はかりきれないものがここにはある。』ということ。
 
 アカデミー指導者との意見交換会での一幕、
 『ドミニカ共和国出身選手の活躍について、日本人は①ハングリー精神の違い・②身体能力の違い、この2つだと決め込んで我々にはできないと思い込んでいるが、本当にそうだと思いますか?』と、LAドジャース・アカデミーで指導歴25年のバウティスタ氏に質問したところ、『日本人にもできる!』と即答でした。
 『1つ目は子どもたちの可能性を最大限に伸ばせる環境作りを行うこと。2つ目はそれを常に改善し継続していくこと。それさえ行っていれば、どこの国だってできるはずだ。』と。

 そう、彼はそれ以上言わなかったけれども、『その1つ目の前に、できていない部分に対して謙虚に気づき、真摯に学ぶ姿勢を持ち続けること。』この気持ちをまず我々が持ち続けなければならないのだと思います。

 最終日、青空の下で輝くカリブ海を右手に眺めながら空港まで皆さんをお見送り。みなさん、ここを離れることに対して少し(たくさん?)寂しさを感じ、そして日本に帰ってやってやろうという闘志を秘めてか言葉少なめ。

 『謙虚に真摯に学び、改善策を常に考え、継続していく。』ハングリー精神、身体能力の違いよりも、当たり前のことを当たり前にやってメジャーリーガーをたくさん輩出しているドミニカ共和国から学ぶべきこと非常に多しです。
 

再会

アントニオ 2014年11月
 
 ロサンゼルス・ドジャースのドミニカ共和国アカデミーで、アドバイザーとして勤務しているアントニオ・バウティスタ氏と8カ月ぶりに再会。

 厚かましくもいつもご自宅にお邪魔しちゃいます。
 2階のベランダで手作りのオレンジジュースをいただきながら、様々な野球の話を伺うのは至福のひと時・・・。

 彼とは1年半前に勤務するアカデミーで出会い、それ以降すごく親しくしていただいて、ちょうど1年前にはグアテマラまで中南米野球研修会の講師としても来ていただきました。

 この日も勤務の後だというのに、快く迎えてもらい1時間の野球談議。

 『日本の野球をもっと良くしたいという君の気持ちは十分わかっているよ。例えば、トーナメント制の大会が当たり前のところを、子どもたちが思い切って失敗できるリーグ戦にしたいという取り組みはどんどん進めるべきだ。ドミニカでもリーグ戦で負けてばっかりで断トツ最下位だったチームから10人以上のメジャーリーガーを輩出したアカデミーもあるんだ。勝っているチームの選手だけに未来のチャンスがあるとしたら、せっかくの才能が埋もれてしまうよ。』

 反対意見もあるだろうが、君の考え方は間違っていないから周りの人と協力してどんどん前に進みなさい、といつも背中を押してもらっています。

 『そうだ!いつか日本の高校生をドミニカに連れてきて、各球団のアカデミーと交流試合をすればいいよ。カナダがもう去年から始めているんだ。お互いにとってきっと良い取り組みになるよ。短期的に見てもいい経験になるだろうし、何よりもそんな経験をした子どもたちが将来立派な大人になってくれれば、それこそが国を豊かにしていくことにつながると思うんだ。一番大切なことは日本という国が豊かになること、ドミニカには野球くらいしかないかもしれないけど、我々が野球を通じて日本に貢献することができればこんなにうれしいことはないよ。』

 日本に一度も行ったこともない人が、自分より日本の未来のことを考えているのではないか?我々は自分たちの国を豊かにするために、今何をすべきか見失っているんじゃないか?とついつい自戒してしまいます。

 もう25年以上もメジャーリーガー輩出に貢献してきて、60歳を超えているにもかかわらず、日本から来た名もない人間に対して常に同じ目線で話し、最大限の敬意を払ってくださる、この謙虚な姿勢はどこからくるんやろう。

 『いつでもここに来てくれるとうれしい。君のことはまるで自分の息子のように思っているんだ。遠い国から自分のところまで野球を学びたいと思ってきてくれることは僕の誇りだよ。』

 もちろん、社交辞令も含めてやけど、またまた甘えてしまいそうです。

 国を豊かにするために野球というツールを活用して人材を輩出する。日本ではそれを『ハングリー精神』というのかもしれないが、その言葉だけで片づけずに我々が学ばなければならない点がたくさんあるように思います。